新しく家を建てるにあたっては、建築基準法を遵守しなければなりません。建築基準法とは、最低限安全に生活できる建物を作るための基準を定めた法律です。すべての内容を網羅する必要がありませんが、基本的なルールを押さえることで、住宅を建てる際の役に立つでしょう。
そこで今回は、建築基準法にも登場する重要な要素のなかから、容積率について解説します。容積率の計算方法や、知っておきたい建築制限の情報なども取り上げるため、これから新しく家を建てる予定がある方は、ぜひ参考にしてください。
容積率の基礎知識
容積率とは、建物の延べ床面積の敷地面積に対する割合を「%」で表したものです。延べ床面積は建物すべての階の床面積を合計した面積のことで「建物面積」とも呼ばれており、延べ床面積が大きければ、比例して容積率も大きくなります。
ここでは、容積率の目的や建ぺい率との違い、指定容積率と基準容積率の概要について解説します。
容積率の目的
そもそも容積率は、何の目的で設定されているのかご存じでしょうか。結論から述べると、容積率は地域の過密化を防ぐために設定されています。
容積率が設定されていない場合、好きなエリアに3階建てや4階建ての建物を自由に建設することが可能です。建物が大きくなれば、その分多くの人が暮らせるようになりますが、人が増えることでさまざまな問題が発生しやすくなります。
過密化によって発生することが予想される代表的な問題のひとつが、暮らしの質の低下です。もし同じエリアに人が集中してしまうと、電気やガス、水の消費が増えてしまい、やがてキャパオーバーを起こしてしまうリスクが高まります。
現代の日本において、各種ライフラインは生活を送るにあたって必要不可欠な存在です。ライフラインが使用できなくなれば、地域の生活の質が著しく低下するでしょう。また、交通渋滞の発生や処理するゴミの量の増加、地価や物価の上昇なども、過密化によって起きる可能性が高いです。
しかし、容積率の設定によってある程度建物の大きさに制限を設ければ、人口をコントロールし、暮らしやすい環境を維持することができます。なお、容積率を無視して建物を建設しようとした場合、工事を断られる、住宅ローンが利用できないなどの問題が発生するため、必ず守るようにしましょう。
建ぺい率との違い
容積率と混同されがちな存在として「建ぺい率」が挙げられます。建ぺい率とは、敷地面積に対する建物面積の割合のことです。建ぺい率によって、その土地に対してどの程度の規模の建物を建てられるかが決まります。
建ぺい率は「建築面積(建物を真上からみたときの面積)÷敷地面積(土地の面積)×100=建ぺい率」で求めることができます。たとえば、建ぺい率が50%と定められている場合、敷地面積が100m2であれば、建物を建てられる面積は50m2以内に制限されます。
建ぺい率も容積率と同じく建築基準法で制限が設けられており、防火対策や住環境の確保、さらに景観の維持といったさまざまな面で、地域の安全と快適さを支える重要な制度です。
まず、防火対策として、建ぺい率は建物同士の距離を確保する役割を果たしています。建物が密集している都市部では、火災が発生した際に火が燃え移りやすくなり、避難経路も確保しづらくなります。しかし、建ぺい率を守ることで延焼リスクを軽減し、安全性を高めることができるでしょう。
また、通風や日当たりの確保にも貢献しています。建物の規模を制限することで、建物同士に適度なすき間が生まれ、風通しや自然光を取り入れやすくなります。これにより、住環境を快適に保つことが可能です。
さらに、景観の美しさを守るうえでも大切な役割を担っています。もし建ぺい率が存在せず、すべての土地に対してギリギリの大きさで建物が建てられた場合、圧迫感のある街並みが生まれる可能性があるでしょう。
しかし、建ぺい率があることで、街並み全体に統一感が生まれ、ひとつの建物だけが悪目立ちすることもなくなります。
このように、防災、住環境の向上、美しい街並みの形成を支える建ぺい率は、地域社会の安全と快適さを実現するために欠かせない制度と言えるでしょう。
指定容積率と基準容積率
容積率には、指定容積率と基準容積率の2種類が存在します。指定容積率とは、土地の用途地域に応じて建物の容積率の最高限度が決まっている制度です。都市計画で用途地域ごとに、50%〜1300%の範囲で制限されています。
指定容積率は市区町村によって異なるため、市区町村の公式サイトで確認しましょう。オンライン上で公開されていない場合は、直接市区町村の都市計画担当部署に問い合わせてください。
一方の基準容積率は、前面道路の幅が12m未満の場合に、道路の幅に応じて定まる容積率のことです。道路幅が狭く、基盤整備が不十分なエリアに、高容積の建築物が乱立するのを抑えるための規定で、土地が複数の道路に接しているときは、広い方の道路の幅員が計算の基準になります。
容積率の計算方法
容積率は、住宅環境を維持するために設定されており、市区町村によって割合は異なります。容積率は計算によって簡単に割り出すことが可能で、基本となる計算式は以下のとおりです。
容積率 = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100
たとえば、延べ床面積が90m2、敷地面積が120m2の住宅の場合、容積率を求める計算式は次のようになります。
90m2 ÷ 120m2 × 100 = 75%
ただし、容積率の計算方法は条件によって変化します。条件ごとの容積率の計算は、以下のとおりです。
2つの道路と接している場合

容積率は、建物を建てる敷地に面している前面道路の幅員が12mを上回っていると指定容積率が適用されますが、幅員が12mを下回っている場合は、低減係数に道路の幅員を乗じたものと指定容積量のうち、厳しい方が採用されます。そして、所有している土地が2つの道路と接しているケースでは、広い方の幅員が計算の基準です。
たとえば、6mの道路と3mの道路に接している土地の容積率は、前者の数値を採用したうえで、以下の計算で算出します。
6m × 40(軽減定数)= 240%
指定容積率が200%の場合、この土地の容積率は計算で算出した240%ではなく、指定容積率の200%となります。
用途地域をまたぐ場合
容積率は用途地域によって制限が異なりますが、複数の用途地域の境界線が存在する土地も少なくありません。その場合は、それぞれの用途地域分の面積ごとに各容積率を算出し、その合計を敷地全体の容積率の値にします。
たとえば、複数の用途地域をまたぐ100m2の土地のうち、70m2が指定容積率100%、30m2が指定容積率200%のときの計算式は、以下のとおりです。
(100% ×(60m2 ÷ 100m2))+(200% ×(40m2 ÷ 100m2))= 140
つまり、この土地の容積率は140となります。
こちらの記事では、坪数について解説しています。坪数の目安や坪数に関する土地選びの注意点も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
容積率緩和の特例
容積率には上限が設けられており、上限を破ってしまうと建築の許可が得られない、資産価値が失われるなど、さまざまなデメリットを被ることになります。しかし、一定の条件を満たした場合、容積率を緩和する特例の適用が可能です。
以下では、具体的な特例の内容について解説します。
駐車場
駐車場は、自動車の利用を促進しつつ十分な駐車スペースを確保するために、特例の対象になっています。どの程度緩和できるかは、駐車場が自走式駐車場なのか、それとも機械式駐車場なのかによって異なる点に注意が必要です。
自走式駐車場とは、駐車スペースに自分で走行して自動車を出し入れするタイプの駐車場で、大型ショッピングモールやデパートなどでよく見かけます。自走式駐車場の場合は、5分の1を容積率の計算から控除可能です。たとえば、50m2の駐車場は、10m2分を容積率の計算から除外できます。
一方の機械式駐車場は、昇降式のものやタワーパーキングなど、機械によって自動車を出し入れするタイプの駐車場です。機械駐車場の場合、駐車スペースの床面積はすべて容積率の計算の対象外となります。ただし、管理室をはじめとする共用部分は除外できません。
地下室

条件を満たせば、地下室も容積率の特例が適用されます。地下室の緩和措置は、地下空間の有効活用を促進し、地上部分の容積率に余裕を持たせるためのものです。地下室の床面積は、全体の面積のうち3分の2を計算から除外できます。
たとえば、150m2の地下室の場合、100m2が容積率の計算の対象外です。上手く利用すれば実質的に容積率を1.5倍にできるため、狭い敷地を有効活用できないか悩んでいる方は積極的に地下室の採用を検討しましょう。
特例を適用するためには、以下の条件を満たしている必要があります。
●天井が地盤面から1m以下
●住宅の用途に供する部分
●地階である※
※床が地盤面よりも下にある階であり、
床から地盤面までの高さが、床から天井までの高さの3分の1以上であること。
上記の条件を満たしていれば、半地下でも特例の適用は可能です。なお、一部でも1mを超えてしまうと、その部分は地上階として扱われます。
小屋裏収納(ロフト)
小屋裏収納も、容積率の特例が適用される対象です。小屋裏収納の活用は、容積率の特例の利用のみならず、デッドスペースの有効活用ができる点もメリットとして挙げられます。
デッドスペースとは、構造や設備の関係上、どうしても利用できないスペースのことです。デッドスペースが発生しやすい場所はある程度決まっていますが、屋根裏の空間が代表的な例として挙げられます。
屋根裏の空間はある程度広さがあるため、単純に収納として利用するだけでなく、子どもがいる過程の場合は遊び場としての活用も期待できるでしょう。特例が適用された場合は、直下床面積の2分の1が容積率の計算から除外されます。たとえば、100m2の小屋裏収納は、50m2が計算の対象外です。
ただし、高さが1.4m以下であることが条件として設けられています。
押さえておきたい建築制限
建物を建てるにあたって設けられている制限は、容積率だけではありません。以下では、容積率のほかにも押さえておいた方がよい制限、規制について解説します。
日影規制

代表的な建設制限として、日影による中高層の建築物の制限「日影規制」が挙げられます。日影規制とは、一定時間以上の日影が生じないように建物の高さを制限するもので、基準は冬至の日です。
日影規制が制定された背景として、1970年代からマンションをはじめとする高層建物が建築された結果、日照阻害の問題が発生し、訴訟が多発したことが挙げられます。日影規制は時間と測定面の高さで表記され、測定面の高さが低く、日影を生じさせる時間が短いほど規制が厳しいです。
なお、対象となるのは商業地域、工業地域、そして工業専用地域以外の用途地域で、日影規制を受ける建物は、用途地域ごとに高さや階数で定められています。
また、地域によって規制の範囲は異なるため、わからない場合は市区町村の公式サイトで調べるか、直接役所の管轄の課に問い合わせて確認しましょう。
斜線制限
斜線制限とは、周囲の土地に関する日照や採光、そして通風の確保などを目的に設定されている制限のことです。
建物の高さを制限しており、建物の北側の日照を確保する北側斜線制限や、隣の敷地に建つ建物の通風や採光を確保し、良好な環境を確保するための隣地斜線制限など、斜線制限のなかでもさまざまな種類が存在します。
なお、斜線制限には高低差による緩和をはじめとするルールもあり、条件を満たすことで特例の適用が可能です。
絶対高さ制限

絶対高さ制限とは、建築物の高さに対する制限のことです。都市計画によって10m、または12mのいずれかが設定されます。この高さの基準は、建物の容積率に関係なく維持されるため、どのような規模の建物であっても遵守が求められます。
このルールは、主に戸建て住宅が多く立ち並ぶ地域で適用されることが多く、住居環境や街並みの景観を守ることが目的です。
たとえば、低階層の建物が並ぶエリアに、高層マンションや大型ビルのような高い建物が建設されると、住民が圧迫感を覚えるだけでなく、日当たりが悪化して室内の明るさが減少したり、周囲の住環境が悪化したりする可能性があります。
これらのトラブルを防ぐためにも、絶対高さ制限は必要不可欠なルールといえるでしょう。
なお、絶対高さ制限にもいくつか例外が設けられています。
まとめ
容積率は、建築基準法で定められている守るべきルールです。本来の容積率の制限を超える住宅を建ててしまうと、住宅ローンの利用制限をはじめ、さまざまな問題が発生しかねません。また、容積率以外にも守るべきルールが多数存在しているため、事前にしっかり確認しておきましょう。
もし容積率に関する疑問がある場合は、ぜひ「FPの家」にご相談ください。「FPの家」では、快適な暮らしがずっと続く、高い性能と耐久性を両立したワンランク上の住み心地のよさを実感できる家づくりを目指しています。
「FPの家」を施工する工務店は、地域密着型の地元工務店です。建築地や地域の気候風土に関する豊富な知識を始め、高い住宅性能と自由な設計で、ご家族の理想の住まいを実現いたします。
見学会や相談会なども実施していますので、興味を持った方はぜひお気軽にお問い合わせください。
こちらで、全国の「FPの家」ビルダー(工務店)の一覧を掲載しています。ぜひあわせてご覧ください。
また、お問い合わせフォームから各種資料の請求ができます。お名前やご住所などの基本情報を入力していただければ、資料請求のほか、その他のご要望にも対応いたしますので、ぜひご利用ください。