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住まいのコラム

2025年9月17日

ピットリビングって実際どう?後悔しないための設計ポイントを解説

SNSや住宅雑誌で目にすることが増えたピットリビング。一段下がったおしゃれなリビング空間に憧れを抱く方も多いでしょう。

この記事では、ピットリビングの基本概念から実際のメリット・デメリット、具体的な設計ポイントまで詳しく解説します。家族が自然と集まる心地よい空間づくりを実現したい方は、ぜひ参考にしてください。

ピットリビングとは:床を一段下げたリビング空間のこと

ピットリビングとは、リビングの床を周囲よりも一段低く設計した空間のことです。「ダウンフロア」や「ダウンリビング」とも呼ばれ、段差によって視覚的に空間を区切ることができる設計手法として注目されています。

一般的には20cm〜40cm程度床を下げて設計され、壁や間仕切りを使わずに空間にメリハリを生み出せるのが大きな特徴です。海外のカフェやオフィスでも多く採用されており、日本でも個性的でデザイン性の高い住宅を求める人々から支持を集めています。

ピットリビングとスキップフロアの違い

ピットリビングと混同されがちなのがスキップフロアです。どちらも床に高低差を設ける点は共通していますが、目的と効果が大きく異なります。

ピットリビングは既存のリビング空間の一部を下げることで、同一空間内での緩やかなゾーニングを目的としています。一方、スキップフロアは各階層の中間に異なる高さのフロアを設け、床面積を増やすことで空間を有効活用する手法です。

ピットリビングの方がより限定的で、リビングに特化した設計といえるでしょう。

見た目だけじゃない!ピットリビングのメリット

ピットリビングにはデザイン性以外にも、住まいを豊かにするさまざまなメリットがあります。

空間を区切ってメリハリを付けられる

ピットリビングの最大の魅力は、壁や間仕切りを使わずに自然と空間を区切れることです。

LDKが一体となった広い空間では、食事スペースとくつろぎスペースの境界が曖昧になりがちです。しかし段差があることで「ここはリラックスする場所」「ここは食事をする場所」と認識しやすくなり、生活にメリハリが生まれます。

パーティションなどの物理的な仕切りと違い、開放感を損なうことなく空間を整理できるのが大きなポイントです。

開放感が出て部屋全体を広く感じられる

>開放感が出て部屋全体を広く感じられる

大屋根の家 静岡県/(株)アイジーホーム

床を一段下げることで、相対的に天井が高く感じられ、空間全体に開放感が生まれます。とくに天井の高さに制約がある住宅では、この視覚効果は非常に有効です。

また、ソファなどの家具の位置が下がることで、視線の抜けがよくなり、部屋の奥まで見通せるようになります。限られた面積でも、実際以上に広く感じられる空間を演出できるでしょう。

デザイン性の高いおしゃれな雰囲気にできる

ピットリビングは、それ自体が空間のアクセントとなり、ワンランク上のデザイン性を演出できます。段差部分をベンチとして活用したり、間接照明を仕込んだりすることで、ホテルライクな上質な雰囲気を作り出すことも可能です。

床材を変えてアクセントをつけたり、ピット部分だけ天井の仕上げを変えたりするなど、インテリアコーディネートの幅も広がります。

段差による「こもり感」でリラックスできる

段差による「こもり感」でリラックスできる

時とともに味わい深くなる空間 福岡県/想創舎(株)手嶋組

床が一段下がることで、周囲に包まれるような「こもり感」が生まれます。この適度な囲まれ感は、心理的な安心感をもたらし、自然とリラックスできる空間になります。

視点が下がることで、普段のリビングとは異なる景色が楽しめ、特別感のある空間として機能するでしょう。読書や映画鑑賞など、集中して楽しみたい時間にも最適です。

活用のバリエーションが豊富

ピットリビングは多様な使い方ができるのも魅力です。畳を敷いて和室風にしたり、キッズマットを敷いて子どもの遊び場にしたり、ホームシアターとして活用したりと、家族のライフスタイルに合わせて柔軟に対応できます。

段差部分には複数人が腰掛けることができるため、ベンチとしても重宝します。さらに、段差内部を収納スペースとして活用すれば、リビングをすっきりと保つことも可能です。

作って後悔?ピットリビングのデメリット

魅力的なピットリビングですが、実際に住んでみると意外な不便さを感じるケースもあるようです。デメリットも事前に把握しておきましょう。

冬は冷気が溜まって寒くなりやすい

冷たい空気は重く、低い場所に溜まる性質があります。そのため、ピットリビングは冬場に底冷えしやすく、暖房効率が低くなる可能性があります。

とくに床暖房が設置できない構造の場合、足元の寒さが深刻な問題となることがあります。暖房器具を併用したり、厚手のラグを敷いたりといった工夫もできますが、光熱費の増加が気になるところです。

段差があるぶん掃除の手間がかかる

段差があることで、掃除の手間が増えるのも大きなデメリットです。掃除機をかける際は段差を上り下りする必要があり、日常的な負担となります。

とくにロボット掃除機は段差を乗り越えられないため、ピット部分は手動で掃除する必要があります。共働きでロボット掃除機に頼りたい家庭には、想定以上に不便に感じられるかもしれません。

高齢者や子どもが足をひっかけるおそれがある

段差は、転倒や躓きのリスクをともないます。とくに、小さな子どもや高齢者がいる家庭では、安全性に十分な配慮が必要です。

夜間や薄暗い時間帯は段差が見えにくく、慣れ親しんだ自宅であっても事故が起こる可能性があります。将来的に家族構成が変わったり、自分たちが高齢になったりすることを考えると、バリアフリーの観点からも慎重に判断することがおすすめです。

レイアウトの自由度が下がる

ピットリビングは空間が固定されているため、家具の配置や大きさに制約が生まれます。季節によってさまざまな模様替えを楽しみたい方や、ライフスタイルの変化に合わせて柔軟にレイアウトを変更したい方には、こうした制約が物足りなく感じられる可能性があります。

また、大型家具の搬入・搬出も段差があることで難しくなり、将来的な家具の買い替え時に困ることもあるでしょう。

長期優良住宅の認定を受けられなくなる可能性がある

住宅性能への意識が高まる昨今、長く住みよい家として注目されているのが長期優良住宅です。この長期優良住宅の認定基準には、床下点検が可能な構造であることが求められており、床下空間の高さは33cm以上必要とされています。ピットリビングで床を下げると、この基準を満たせない場合があります。

長期優良住宅の認定を受けられない場合、税制優遇や住宅ローンの金利優遇などのメリットを享受できません。将来的な資産価値にも影響する可能性があるため、十分な検討が必要です。

ピットリビングが合うのはどういう家?

ピットリビングは、デザイン性や個性を重視し、メンテナンスの手間を苦にしない家庭に適しています。共働きでも掃除に時間をかけられる方や、ロボット掃除機に依存しない掃除スタイルの方なら、快適に使いこなせるでしょう。

家族構成としては、小さな子どもがいない、または十分に注意を払える環境にある家庭が望ましいです。また、将来的に高齢者との同居予定がない場合や、バリアフリーよりもデザインを優先したい場合に向いています。

さらに、リビングでの過ごし方を重視し、くつろぎの時間を大切にしたい家庭にもおすすめです。映画鑑賞や読書、家族団らんなど、特定の目的を持ってリビングを活用したい方には大きなメリットを感じられるでしょう。

失敗しないために!使いやすいピットリビングを作るポイント

ピットリビングを成功させるためには、デメリットを解消し、メリットを最大化する設計が重要です。

使い方を具体的にイメージしながら計画する

まず、どのようにピットリビングを使いたいか、具体的にイメージしましょう。

・家族でホームシアターを楽しみたい
・子どもの遊び場として活用したい
・それとも大人のくつろぎ空間として使いたい

こうした目的が明確になれば、必要な広さや設備、周辺環境も見えてきます。たとえば、ホームシアター用途なら遮光性や音響設備、子どもの遊び場なら安全性と掃除のしやすさを重視した設計が必要です。

生活動線に沿った場所に設置する

ピットリビングの位置は、日常の生活動線を考慮して決めましょう。家族がよく通る場所に設置すると、段差による事故のリスクが高まるためです。

逆に、リビングの奥や窓際など、比較的動線から外れた場所に設置すれば、安全性を確保しながら落ち着いた空間を演出できます。キッチンからの視線も考慮し、料理中でも家族の様子を見守れる位置に配置することも大切です。

寒さ対策を考えておく

冷気が溜まりやすいピットリビングでは、寒さ対策が必須です。床暖房や空調設備などさまざまな方法が有効ですが、なんといっても、断熱性能の高い壁材や床材を選ぶことが大切です。

「まるで魔法瓶のような家」と評される「FPの家」は、業界最高水準の断熱性能を誇るFPウレタン断熱パネルによって高い断熱性能を誇ることが特長です。冬場も暖かく快適な空間をつくるには、外からの冷気をシャットアウトしてくれる、高い断熱性能を持った家づくりが不可欠なのです。

段差の高さは慎重に決める

段差の高さは、快適性と安全性を大きく左右します。低すぎると特別感が薄れ、高すぎると危険性が増します。

一般的には20cm〜40cm程度が適切とされていますが、家族の年齢や体格、使用目的に応じて調整が必要です。小さな子どもがいる家庭では15cm程度に抑え、大人中心の使用なら30cm〜35cm程度でも問題ないでしょう。

段差部分の角は丸くしたり、滑り止めを設置したりすることで、安全性を高めることができます。

天井高をとりすぎないようにする

ピットリビングの魅力である「こもり感」を演出するためには、天井高のバランスが重要です。床を下げた分、天井が高く感じられますが、高すぎると落ち着かない空間になってしまいます。

一般的なリビングより少し高い程度に抑えることで、開放感とこもり感のバランスを取ることができます。吹き抜けとの組み合わせを検討している場合は、とくに注意深く計画しましょう。

ピット部分の素材にもこだわる

ピット部分の床材や仕上げ材は、デザイン性と機能性の両面から選択しましょう。一般的なフローリングと異なる素材を使うことで、空間にアクセントを加えることができます。

畳やカーペット、クッションフロアなど、くつろぎ感を重視した素材も人気です。ただし、掃除のしやすさやメンテナンス性も考慮し、ライフスタイルに合った素材を選ぶことが大切です。

また、段差部分の仕上げにも配慮しましょう。木材で温かみを演出したり、タイルでモダンな印象を作ったりと、空間全体のテイストに合わせて選択できます。

まとめ

ピットリビングは、適切に設計すれば家族が自然と集まる魅力的な空間を創り出せる一方で、安全性や機能性の面で課題もある設計手法です。

導入を検討される際は、ご家族のライフスタイルや将来の計画を十分に考慮し、デメリットへの対策も含めて慎重に計画することが重要です。とくに、寒さ対策や安全性の確保、掃除のしやすさなどの実用面での配慮を怠らないことが、長く愛される空間づくりの鍵となります。

地域の気候を知り尽くした「FPの家」ビルダーは、お客様一人ひとりのライフスタイルに寄り添い、機能性とデザイン性を両立した住まいづくりを全力でサポートいたします。ピットリビングに関するご相談も、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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