夏の暑さ対策として日射遮蔽(にっしゃしゃへい)は非常に重要といわれています。しかしながら「日射遮蔽とは?」と疑問に思う方は多いのではないでしょうか。
本記事では、日射遮蔽の定義や具体的な方法を解説し、これからの家づくりに役立つ情報をお届けします。快適な夏を過ごすためにも、ぜひ参考にしてください。
日射遮蔽とは?日射取得についても解説
日射遮蔽とは、太陽の光が室内に差し込むのを防ぐための工夫のことです。とくに、夏場の強い日差しを遮ることで室温の上昇を抑え、快適な住環境を保つとともに、冷房にかかるエネルギーを削減する効果があります。
この背景には、近年増えている「高断熱住宅」の特徴も関係しています。高い断熱性がある住宅は冬に暖かい反面、夏には一度入った熱がこもりやすく「オーバーヒート」と呼ばれる室温の高止まりが起こりやすくなるのです。
なかでも、日射熱の侵入経路として最も大きな割合を占めるのが窓です。夏に室内へ入る熱の約70%が窓からといわれており、これが冷房効率の悪化や電気代の増加につながります。しかし、窓まわりでしっかりと日射遮蔽を行えば、冷房の負担を大きく軽減できます。
一方、冬は逆に太陽の光を「積極的に取り込む」ことが快適な住まいづくりに欠かせません。つまり、季節や方角に合わせて「光を防ぐ」「光を入れる」のバランスを取ることが、年間を通じて省エネで快適な暮らしを叶えるポイントになります。これが、現代の住宅に求められる「日射コントロール」の考え方です。
日射遮蔽の主な方法
住居において日射遮蔽と日射取得は欠かせない対策です。どちらも太陽の光や熱をコントロールするための工夫ですが、目的や季節によって取り入れ方が異なります。ここでは、それぞれの意味や役割、住宅設計における活用方法について解説します。
窓の外側で行う日射遮蔽の方法
まずは、代表的な外付けブラインドやすだれ、オーニングなどの窓の外側で行う遮蔽手段を解説します。
軒・庇

建物の一部として設計に組み込まれる「庇(ひさし)」は、もっとも自然で持続的な日射遮蔽の手段です。とくに、南向きの窓には、太陽高度の高い夏の直射日光を遮りつつ、冬の低い角度の光は室内に取り込めるよう、長さや角度を緻密に調整することが理想です。
そのため、設計段階から庇の配置を工夫し、冷暖房への依存を減らせば、年間を通して快適な室温を保ちやすくなります。
ルーバー
ルーバーとは、細長い羽板(はいた)を並べて設置する構造で、水平または垂直に配置されます。直射日光は効果的に遮りながらも、通風性や視界、採光をほどよく確保できる点が特徴です。
また、アルミ製や木製、ガラス入りなど素材のバリエーションも豊富で、外観デザインと調和させやすいのも魅力です。さらに、可動式のルーバーを選べば、太陽の高さや季節に応じて角度調整が可能となり、時間帯ごとの日射がコントロールできます。
アウターシェード
「アウターシェード」や「スタイルシェード」と呼ばれるロールタイプの日除けは、必要なときに手軽に引き下ろせるのが最大のメリットです。
サッシの上部に収納されたシェードを引き下ろすだけで、窓の外で太陽光を反射・遮断でき、室温の上昇を大幅に抑えられます。使わないときはすっきりと収納でき、外観を損なわない点も人気の理由です。
オーニング
布製の可動式テント「オーニング」は、カフェのテラスのようにおしゃれな外観を演出しながら、実用的な日除けとしても高い効果を発揮します。具体的には、手動タイプや電動タイプがあり、使いたいときだけ広げて、日差しが気になる時間帯だけしっかり遮蔽できるのが特徴です。
リビング前の掃き出し窓などに設置すれば、屋外に快適な日陰スペースも生まれ、家族のくつろぎの場として活用もできます。
外付けブラインド
近年注目されている「外付けブラインド」は、室内のブラインドと同じ見た目にもかかわらず、窓の外側に設置すれば日差しを遮る効果が格段に向上します。
さらに、ブラインドの角度は細かく調整できるため、強い日差しはしっかり遮りながら、やわらかな自然光を室内に取り入れることも可能です。室外にも設置すれば、ガラス越しに熱が伝わるのを防ぎ、断熱効果もアップします。
シャッター・雨戸
防犯や台風対策のために設けられることの多いシャッターや雨戸も、実は優れた日射遮蔽の役割を果たします。とくに、アルミ製や断熱材入りの高性能タイプを選べば、夏場の日差しをしっかり遮り、冷房効率を高める効果も期待できます。
さらに、近年ではデザイン性の高いスリット入りタイプや、電動で開閉できるモデルも増えており、現代の住宅にも違和感なく取り入れられるでしょう。
すだれ

昔ながらの「すだれ」は、自然素材の持つ風合いが魅力的なだけでなく、優れた通気性と日射遮蔽性を兼ね備えた実用的なアイテムです。
外側からの直射日光をやわらげつつ、室内には適度な明るさと風を取り込むため、まさに日本の高温多湿な気候に適した知恵といえます。
窓の内側で行う日射遮蔽の方法
窓の内側で行う日射遮蔽は、インテリアとの調和もしやすいのが特徴です。ここでは、室内側から太陽の熱を抑える方法について紹介します。
遮熱型のカーテンやロールスクリーン
遮熱機能を備えたカーテンやロールスクリーンは、室内側から簡単に日射対策ができる手軽なアイテムです。特殊な機能性繊維やコーティングにより、窓ガラスを通過した熱線を反射・吸収し、室内への熱の侵入を抑える構造になっています。
また、カーテンの場合は厚地タイプや裏地付きタイプを選べば高い遮熱効果が得られます。ロールスクリーンはスタイリッシュな見た目で、コンパクトに収納できる点が魅力です。
ハニカムブラインド
ハニカムブラインドは、断面がハチの巣状(ハニカム構造)になっており、空気の層を作ることで高い断熱性と遮熱性を発揮します。
さらに、日射遮蔽だけでなく冬場の保温効果も非常に高く、オールシーズンで室内の温度環境を快適に保てます。製品によっては内蔵のアルミフィルムが輻射熱を反射し、さらなる省エネ効果も期待できるため、冷暖房にかかるエネルギー消費を大きく抑えることも可能です。
障子
和の住まいに欠かせない障子は、その見た目の美しさに加えて、優れた機能性も備えています。たとえば、和紙を通して差し込むやわらかな光は、室内に穏やかな雰囲気をもたらすと同時に、夏の強い直射日光をやさしく和らげてくれます。
さらに、障子の紙と木枠の間に生まれる空気層は、断熱や遮熱の効果を発揮し、冷暖房効率の向上にも寄与します。このように、障子は見た目だけでなく、快適な室内環境づくりにも一役買っているのです。
窓の種類も日射遮蔽に影響を与える
どんなに庇やブラインドで工夫しても、窓自体の種類と性能が遮熱効果を大きく左右します。そこで、ここからは主な窓のバリエーションと日射遮蔽性能への影響を紹介します。
FIX窓
FIX窓とは開閉できないタイプの全面ガラス窓で、外の景色を楽しめる反面、日射がダイレクトに室内へ入りやすい構造です。
風を取り込めないため換気性能もなく、夏場は室温の上昇につながりやすいため、遮蔽対策は必須です。そのため、外付けブラインドやシェードと組み合わせた熱対策が欠かせません。
滑り出し窓
滑り出し窓とは窓枠から外側へ開く構造が特徴で、縦すべり出し・横すべり出しなどの種類があります。また、開口部が比較的小さいため、日射の流入を抑えやすく、風の取り込みやすさにも優れています。
したがって、窓の開き方を工夫すれば直射日光を避けながら通風ができるため、日射制御と快適性の両立がしやすいタイプといえるでしょう。
引き違い窓
もっとも一般的な窓のタイプが、引き違い窓です。左右に大きく開くため通風や採光に優れていますが、その反面、夏は熱や紫外線が室内に入り込みやすいという弱点もあります。そのため、遮熱性能をしっかり確保することが重要です。
具体的には、遮熱性能の高いガラスを採用したり、遮熱カーテンや外付けシェードを組み合わせたりすることで、室内の温度上昇を防げます。
掃き出し窓
庭を楽しむモダンスタイルの家 / (株)ライフ・コア デザインオフィス
掃き出し窓は、床から天井近くまで届く大きな窓で、バルコニーや庭と室内をつなぐ出入り口としてよく使われます。室内にたっぷりと光を取り込み、開放感のある空間を演出できるのが魅力です。
その反面、太陽の光や熱が直接入りやすく、室温の上昇に影響しやすいというデメリットもあります。夏場は、強い日差しによる暑さを和らげるために、庇やオーニング、外付けブラインドといった遮蔽アイテムを併用しましょう。
上げ下げ窓
上げ下げ窓は、ガラス部分を上下にスライドさせて開閉するタイプの窓で、開けても外に突き出さない点が特徴です。そのため、窓の外側にシェードやブラインドを設置しやすく、外付けの遮蔽対策と相性がよいとされています。
また、比較的小ぶりなサイズが多く、設置場所を選ばないのも魅力のひとつです。たとえば、上部だけを開けて風を取り込み、下部には遮蔽アイテムを設けて直射日光を防ぐ、といった工夫も可能です。
【方角別】日射遮蔽の対策方法
日射遮蔽の効果を最大限に高めるためには、窓の位置する「方角」に合わせた対策が重要です。太陽の動きや高度は季節や時間帯によって大きく変わるため、画一的な遮蔽方法では十分な効果を得られません。
ここでは、南側・北側・東西側それぞれの特徴に応じた、効果的な日射遮蔽の考え方とおすすめの対策方法を紹介します。
南側:日光がよく入る方角
南側の窓は、1年を通して最も日射を受けやすい方角です。夏場は太陽が高く昇るため、深めの庇やルーバー、外付けブラインドなどで上からの直射日光を遮るとよいでしょう。逆に冬は太陽の角度が低くなるため、庇の影をくぐって暖かい日差しが室内奥まで差し込みます。
北側:日光が入りにくい方角
北側の窓は、1年を通じて直射日光がほとんど差し込まないため、日射による影響が少なく、夏でも室温の上昇を抑えやすいのが特徴です。主に自然光の取り込みや風通しを目的として活用され、やわらかな光を取り入れるのに適しています。
ただし、冬は冷え込みやすいため、断熱性能の高い日射取得型ガラスの採用が推奨されます。また、北東や北西に大きな窓を設ける場合は、朝日や夕日が差し込む可能性があるため、配慮が必要です。
東側・西側:朝夕の日差しが強い方角
東側や西側の窓は、朝と夕方に低い位置から差し込む強い日差しを受けやすいのが特徴です。夏場は、西日による室温上昇や、家具・床の日焼けも懸念されます。そのため、日射遮蔽の効果を十分に得るためには、外付けのシェードやブラインドの活用が有効です。
また、窓周辺に樹木やグリーンカーテンを設置すれば、自然の力を利用して日差しを柔らかく遮ることができ、室内の快適さと省エネ効果の両立が期待できます。
まとめ
日射遮蔽は、家族が快適かつ経済的に暮らせる住まいを実現するために欠かせない工夫です。とくに、新築の設計段階で夏の日差しをどう遮るかを考えることは、住環境の快適さを大きく左右します。
庇やカーテンなどの窓に対する工夫のみならず、その土地の特性、たとえば日射角や周囲の建物の影響、風通しを踏まえた、家全体の設計計画が非常に重要なのです。
だからこそ、その地域の気候や土地の性質を知り尽くした地元工務店に依頼する安心感は、住まいづくりにおいて大きな強みになります。
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