山深い地での15年を経て、たどり着いた理想の住まい
シンプルモダンでありながら、形状に変化をつけたO様邸の外観。外壁の上部には、虹をかたどったネーム入りのオブジェが飾られている。
仙台市の南に位置する、宮城県柴田町。今回の取材は、「FPの家」のオーナー様で初めての、イギリス人のお客様です。
Oさんの職業は陶芸作家。イギリスでの中学校時代に陶芸を始め、日本でさらに腕を磨こうと、1982年に来日しました。東京の陶芸教室、福島県の大堀相馬焼(おおぼりそうまやき)の窯元での修業の後、1991年、柴田町に工房兼自宅を作って独立。自らの工房である「雷窯(いかずちがま)」の名は、所在地の地名(柴田町大字葉坂字雷)に由来しています。
Oさんが柴田町を選んだのは「広い自然の中で作陶(さくとう)したい」という思いからですが、実際に工房を訪ねてみると、そこは予想をはるかに超える山の中。
「確かに自然はいっぱいあるものの、この場所で暮らすのかと、びっくりしました」と奥様。前の持ち主が住んでいた時に火災に遭い、公民館を解体した材を持ち寄って建てたという家は、子育てにも生活にも過酷な環境だったのです。
「断熱材などはもちろん入っておらず、冬は石油ストーズをガンガン焚いて地球温暖化に貢献していました(笑)」と奥様。5年間の約束が、結局15年もの間そこで暮らし続けたOさんご一家。2人のお子さんの将来も考えて町の中に家を持とうと、FPでの新築を決意するに至ったのです。
“理想の断熱材”であるFPパネルにぞっこん
Oさんご夫妻が新しい家に望んだことは、冬暖かく、環境にやさしい家。「石油ストーブは使わず、暖房の音やニオイもない家」を強調するあたりは、以前の暮らしが想像できます。
ところで、イギリス人のOさんにとって、情報収集の過程で出会った「FPの家」はどう映ったのでしょう?
「伝統的なレンガ造りの家が多いイギリスでは、新しい家を建てるということはまずありません。古い家を買って改造するのが普通ですが、レンガなので壁の中に空間はない。でも、日本で家を建てるなら、断熱材が非常に大事だと考えていました。地震に強く、結露の心配もない『FPパネル』は、断熱材としては理想的。壁の中の見えないところまでしっかりしているのが安心でした」と、納得のお答え。「ただ、『FPの家』というブランドではなく、パネルだけが欲しいと思ったのがホンネなんですよね(笑)」とも。
とはいえ、実際の住み心地や経済性について伺うと「空気はきれいですし、家の中の温度が一定で、冬はどこにいても寒くないのがいいですね」と奥様。Oさんも「工房には窯などの設備があり、電気代がかさむのですが、この家は冬も夏も電気代が安くて助かっています」とのこと。
さらに、「日本では『家は3回建てなければ満足できない』と聞いていますが、1回で大満足。この予算でこの家ができたのはラッキーですね」と喜びを隠せません。
高断熱のFPパネルは、高度な気密施工技術があってこそ、優れた特性が活かされるもの。「FPの家」のブランド云々についても、そこはひとつ日本の住宅事情に免じてお許しいただきましょう
モノを作る立場としての、こだわりの家づくり
陶芸作家であるOさんのお住まいには、ご自分の作品を展示するギャラリースペースがあります。そして、家づくりの際にも、モノを作る立場としてのこだわりを大切にしました。
「階段や建具は、大工さんの技を大切にしたかったんです。また、できるだけ地元の材、とくに杉を使いたかったんです」とOさん。床にもやわらかく傷つきやすいと言われる杉材を用いましたが、「冬に素足で歩いてもあたたかみがありますよ。自然のものは多少傷になっても気にならず、たとえ古くなっても、木の色が変わっていくのが味になりますから」と。
Oさんの「雷窯(いかずちがま)」では、生活の中で使いやすい食器をメインに製作しており、「虹」などをテーマにした色鮮やかな作品が特徴です。工房では陶芸教室も主宰し、ユーモアを交えた話術でコミュニケーションもお手のものです。奥様との出会いも、「東京時代に、3万kmくらいの長く赤い糸に導かれて」結ばれたとのこと。
「これからこの家で、どんな暮らしを…?」と尋ねると、「有名になってお金持ちになったら、工房もFPで作りたいですね」とOさん。それに対し、「工房をFPで作ると、家に帰ってこなくなるから困るわ」と奥様。お互いの生き方を尊重し合いながら、楽しく暮らしている、そんな素敵なご夫妻でした。
以前のお住まいではお子さんの通学のために、1日に何度も駅まで送り迎えをしたという奥様。「FPの家」で快適かつ穏やかに、暮らしは激変。
以前は旧宅として使われていた工房の一室。背後に山林が迫っていることから、結露に悩まされていたことがよくわかる。
Oさんの作品が飾られた、自宅内のギャラリースペース。平和の象徴である「虹」をテーマにした作品が目を引く。