お米も人も“あずましい”、木造の倉庫
大断面を持つ柱とその間にFPパネルを組み入れた構造の大規模な倉庫は、断熱性・気密性に加え、強度の面でも優れている。
FPパネルを使った米倉庫は、単に保管というだけでなく、Iさんご自慢のお米の品質を長く保つための「保冷」という重要な役割を担っています。
当初は鉄骨による保冷倉庫の建設を計画していましたが、Iさんの奥様と工務店の社長が中学の同級生で、クラス会でたまたま話をしたことをきっかけに、「FPの保冷倉庫」は実現しました。
倉庫の規模は全体で約100坪、保冷室の部分が約40坪で、大断面をもつ12cm×24cmの柱の間に、12cmのFPパネルを組み入れた構造になっています。
この保冷倉庫には、Iさんが所属する「津軽農民組合(津軽の農業を守る会)」や周辺農家から預かったお米、そしてご自身が作ったお米を合わせ、およそ1,500俵ものお米が保管されています。
「木造にしたことで、あたたかい感じがして、あずましい※1ね。夏場でも15℃を維持して、お米の品質をいい状態に保てるし、冷蔵の機械は以前の2トン保冷車用の小さいものそのままで、十分威力を発揮しているよ」と喜びを隠せないIさん。
かつての保冷車に比べ、容積はおよそ10倍になったにもかかわらず、気密性が良いことで、驚きの効率を実現しているのです。
※1 あずましい=「ゆったりして気持ちがいい、落ち着く」などの意味を表す、東北・北海道地方の方言。
“こだわりの米づくり”を支えるFPの倉庫
Iさんのお米づくりには、並々ならぬ“こだわり”があります。有効微生物群である「EM菌・ぼかし肥※2」を使ったお米を栽培しているのです。簡単にいうと「有機栽培」なのですが(詳しくは注釈を参照)、さまざまな試行錯誤を繰り返した結果、納得のおいしさを見いだしたのです。
「有機栽培はご飯を炊いた時、米粒に弾力があって、プリプリして食味が違う。こだわって作ったお米を『おいしい』と言ってくれる反応を確かめながら、直接消費者に届けられるのが、米づくりのおもしろいところだね」とIさん。
そして、FPの広い倉庫ができたことで、検査・格付け、等級判定後の収納はもちろん、出荷に向けての精米や袋詰め作業もしやすくなったそうです。なにしろ1,500俵ものお米を管理しているのですから、品種によって袋の形状もさまざまで、30~40種類にも及ぶのです。「維持管理面ではローコストを実現でき、温度管理にも優れている」と喜ぶIさん。現在、Iさんのお米は利尻島から東京、静岡のお客様にまで届けられているそうです。
「これからも消費者に、安全でおいしい“こだわりの米”を届けたいね」そう語るIさんの情熱を、FPの保冷倉庫が力強く支えているのです。
※2 EM菌・ぼかし肥=EM菌とは、琉球大学農学部・比嘉照夫教授が開発した、土壌改良用の微生物資材。好気性と嫌気性の微生物(主に乳酸菌、酵母、光合成細菌)等を複合培養したもの。性質の異なる微生物が連動して、相乗効果を発揮。作物の品質向上、食味向上、出荷してからの日持ちが良くなり、増収につながる。ぼかし肥とは、勇気微量を発酵させて肥効を穏やかにしたもの。
袋ひとつをとっても、生産者の熱い想いが見てとれる。
Iさんのこだわりも米袋にしっかりと表示。たくさんの苦労も消費者の「おいしい」の一言で報われる。
保管・管理はわずか3俵から始めて、今では約1,500俵までに。保冷室なので実際はひんやりだが、木のぬくもりが温かい。