窓は、熱の出入りが最も多い場所です。窓の断熱性を高めることで冷暖房の効き目もよくなり、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる環境が手に入ります。断熱性を手軽に高められる方法として断熱シートが人気ですが、果たしてどのくらい効果があるものなのでしょうか?
この記事では、窓の断熱シートの効果や注意点を紹介しています。より効果的な窓の断熱方法についても解説しているため、快適な住環境を目指す方におすすめの記事です。
窓の断熱シートは意味がない?
断熱シートは手軽に導入できる暑さ・寒さ対策のひとつとして人気です。窓ガラスに貼り付けることで、夏場は太陽光を反射し、室内への熱侵入を防ぎます。一方、冬場は、外への熱の放射を抑えることで、窓ガラスからの熱の損失を軽減できます。
ただし、断熱シートはガラスそのものの断熱性能を根本的に変えるわけではありません。断熱性能を上げるためには、複層ガラスのように、ガラスとガラスの間に空気層を作る必要があります。
断熱シートは空気層をほとんど作れないため、熱の出入りを防ぐ効果は限定的であり、あくまでも補助的な対策としてとらえるべきです。
本格的に室温の変化を抑えたいなら、窓そのものの性能を上げることをおすすめします。断熱シートと比べて初期コストはかかりますが、断熱性能が大幅に上がることで冷暖房効率や快適性の向上につながるため、長期的に考えるとおすすめです。
窓に使用する断熱シートの注意点
断熱シートを貼る際は、選び方や交換頻度に気をつけなければなりません。以下で、断熱シートを利用する際の注意点について解説します。
窓ガラスが割れることがある

断熱シートに適さない窓ガラスに貼ると、熱割れが起きて窓ガラスが割れるおそれがあります。熱割れとは、窓に太陽光が当たることで熱がこもり、ガラスが割れてしまう現象のことです。
断熱シートを窓に貼ると、シートが熱を反射・吸収するため、ガラスの表面の一部が極端に温度上昇する場合があります。熱い部分と冷たい部分があることで、温度差によりガラスに圧力がかかり、熱割れの原因となるのです。
とくに網入りガラスや複層ガラス、Low-E複層ガラスの場合は、熱割れが起こりやすいため、断熱シートを貼ってはいけません。熱割れを起こすと、窓を交換する必要が出てきます。
定期的に貼り替える必要がある
断熱シートは強い日差しを受け続けると劣化します。そのため、定期的に貼り替えを行う必要があります。
断熱シートが劣化する主な原因は、紫外線や温度変化です。シートが紫外線や熱により劣化し、粘着力が弱まることで剥がれやすくなります。また、窓掃除や結露によって、シートの性能が低下する場合もあります。
断熱シートの耐久性は製品によって異なりますが、半年に一度を目安に貼り替えましょう。とくに強い日差しがあたる南向きの窓や、結露が多発する冬場の窓は、環境の影響で劣化しやすいため早めの交換を心がけてください。
接着しづらいタイプがある
一部の窓は、断熱シートが接着しづらいタイプがあります。たとえば型板ガラスは、模様や凹凸があるため、平らな部分がありません。
型板ガラスとは、模様や凹凸があるガラスのことで、主にトイレやお風呂場で使用されています。通常の断熱シートでは、粘着剤が凹凸に密着しにくく、シートが浮いてしまうまたははがれることがあります。型板ガラスにシートを貼る際は、型板ガラス専用の断熱シートを選ぶようにしましょう。
窓に使用する断熱シートの選び方
断熱シートは種類が多く、どれを選べばよいのか迷う場合もあります。ここでは、断熱シートを選ぶ際に押さえておきたいポイントを紹介します。
季節

断熱シートは季節に応じて最適なものを選びましょう。夏用、冬用、オールシーズン用の3つがあります。冬は、室内の暖かい空気を外に逃がさないことが重要なため、断熱効果の高い素材を持つシートを選ぶとよいでしょう。
一方、夏場は、太陽からの熱を遮ることが重要です。UVカットや赤外線カット機能を持つ断熱シートが効果的です。とくにアルミ素材のものは、冷房効率を高めるために役立ちます。アルミは赤外線(熱線)を反射する能力が高いため、室内に入る熱エネルギーを大幅に減少できるからです。
オールシーズン対応の断熱シートは、冬は保温効果、夏は遮熱効果をバランスよく発揮してくれます。季節ごとに貼り替えるのが手間に感じる場合は、オールシーズン対応のシートを選ぶとよいでしょう。
空気層の厚み
断熱シートは厚みがあるほど空気層を多く含むため、断熱効果が高くなります。夏場は、厚さ2〜4mmのシートがおすすめです。
冬場は、5mm以上の厚めのシートが適しています。とくに寒さを防ぎたい場合は、7mm以上のシートを選ぶと効果的です。ただし、厚みが増すほど窓の開閉がしづらくなるため、注意しましょう。
デザイン
断熱シートは、デザインの種類が豊富なため、部屋のインテリアに合わせて選びましょう。たとえば、透明や半透明のシートは、窓からの光を取り入れつつ室内を明るく保ちたい場合に最適です。とくに日当たりを確保したい部屋や、すっきりとした見た目を重視する部屋におすすめです。
また花柄、水玉、幾何学模様、レース、ボタニカル柄、北欧風など、多彩なデザインもそろっています。おしゃれな雰囲気を演出したい場合には、デザイン性の高いシートを選ぶことをおすすめします。
タイプ
断熱シートには「吸着タイプ」と「シールタイプ」の2種類があります。
吸着タイプは、水を窓に吹きかけるだけで簡単に装着できるシートです。特別な道具が不要で、はがす際に跡が残りにくいのが特徴です。そのため、季節ごとに手軽に取り替えたい場合に最適です。
一方、シールタイプは、裏面に粘着剤が塗布されているタイプです。粘着剤がガラス面に密着することで貼り付けられます。ただし、貼り直しが難しく、一度貼ると再利用や取り外しが難しい点に注意が必要です。はがした後に粘着剤の跡が残ることがあり、除去に手間がかかる場合もあります。
窓の断熱性を高めるべき理由
窓の断熱性を高めることは、室内環境を快適に保つためにも欠かせません。ここでは、窓の断熱性を高めるべき理由や、低い場合のリスクについて解説します。
結露の発生を防げるため
窓の断熱性を高めることで、結露の発生を防げます。結露の主な原因は、空気中に含まれる湿気です。
冬場、室内の暖かい空気には湿気が含まれています。この暖かい空気が冷たい窓ガラスに触れることで、空気中の水蒸気が冷やされて、水滴となって凝縮します。これが結露の正体です。
断熱性の低い窓は結露が発生しやすいため、カビやダニが増える原因となり、窓枠やサッシを腐食させるおそれがあります。
さらに、気管支ぜん息やアレルギーなどの健康被害を引き起こすリスクもあります。窓の断熱性を高めることで結露を防ぎ、住まいを清潔に保つことにもつながります。
ヒートショックを防げるため
窓の断熱性を高めることは、ヒートショックの防止にも効果的です。ヒートショックとは、暖かい場所から寒い場所へ移動したときに、急激な温度変化で血圧が大きく変動し、心臓や脳に負担がかかる現象です。とくに高齢者や持病を持つ方では、心筋梗塞や脳出血、脳梗塞のリスクが高まります。
断熱性の低い窓は、外の冷気を室内に伝えやすいため、部屋ごとの温度差が大きくなりがちです。冷えたトイレや浴室への移動時や、朝晩の冷え込みが強い時間帯に、体が急な温度変化にさらされることでヒートショックが発生しやすくなります。
断熱性の高い窓を使用すれば、冷気をシャットアウトして室温を安定させられます。温度差を減らすことで、ヒートショックのリスクを軽減できるでしょう。リビングや寝室だけでなく、トイレや浴室の窓にも断熱性の高いものを採用することをおすすめします。
快適に過ごせるため
窓の断熱性を高めると熱の出入りが抑えられ、室内で快適に過ごせるようになります。外気温の影響を受けにくくなるため、寒暖差が激しい季節でも室温を一定に保ちやすく、体調不良や風邪を予防できるのがメリットです。
とくに子どもは体温調節が未発達なため、寒暖差の影響を受けやすくなります。温度差を減らすことで、風邪や発熱、体調不良を防ぐことが可能です。
光熱費を削減できるため
窓の断熱性を高めることで、光熱費を削減できます。具体的には、エアコンや暖房の稼働時間や使用頻度が減り、温度設定も適正な範囲内で済むようになります。余分なエネルギー消費が抑えられることで、光熱費を節約できるでしょう。
環境負担を軽減できるため
断熱性の高い窓は、環境への負担を軽減できます。断熱性能を向上させることで、冷暖房に必要なエネルギー消費を抑えられ、CO2の排出量削減につながるでしょう。
地球温暖化の主な原因は、化石燃料の燃焼により発生するCO2です。私たちが使う冷暖房の電力は、多くの場合、発電所で化石燃料を燃やして生み出されています。
とくにエアコンは電力消費量が多いため、窓の断熱性能を高めることが、エネルギー使用量の削減につながります。住宅の断熱性能を向上させることは、私たち一人ひとりが環境保護に貢献できる方法のひとつといえるでしょう。
断熱シート以外の断熱方法
断熱シートの効果は限定的なため、シート単体では十分な結果を得られない場合があります。窓の断熱性能をさらに高めるためには、以下の方法もぜひ検討してみてください。
厚地・断熱カーテンを取り付ける
厚地・断熱カーテンは、通常のカーテンよりも生地が厚いカーテンです。特別な断熱加工が施されているため、窓からの冷気を効果的に遮断できます。
断熱効果をより高めるためには、カーテンのサイズ選びが重要です。上下や両サイドから冷気が入り込むのを防ぐためにも、窓枠を完全に覆うように大きめのサイズを選びましょう。長さは床に届くくらいのものが理想です。
断熱ボードを使用する
断熱ボードとは、主に発泡スチロールでできた軽量なボードのことです。手ごろな価格で購入でき、簡単に設置できるのが特徴です。使い方は以下のとおりです。
・窓の下半分に立てかけて足元の冷気を防ぐ
・隙間部分にテープで固定して冷気の侵入を抑える
カッターで簡単にサイズを調整できるため、DIY感覚で使えます。ただし、発泡スチロール製なのでデザイン性に欠ける点や、光を遮ることで部屋が少し暗くなる点には注意が必要です。
プラダンを使用する
プラダンも、窓の断熱性をアップさせるのに効果的な素材です。プラダンとは、ポリプロピレンというプラスチック素材でできた板のことです。
表面が波形状になっており、段ボールのような構造を持つため、空気を多く含みます。この空気層が熱を通しにくいため、プラダンを使用することで、外からの冷気を効果的に遮断できるのです。
プラダンは、プラダンを窓とカーテンの間に立てかける、または両面テープで窓に直接貼り付けて設置します。簡単に取り付けられるのがメリットですが、外観が無骨になりやすく、洗練された印象からは遠のきます。
二重窓を設置する
二重窓は、1枚の窓ガラスの内側に、もう1枚のガラスを重ねた構造の窓です。「複層ガラス」とも呼びます。
2枚のガラスの間には空気層があり、外からの冷気や熱を遮り、室内の温度を安定させる性能があります。冷暖房の効率がよくなるため、冬は暖房が効きやすく、夏は冷房効果を持続できるでしょう。
ほかにも、以下のような効果があります。
・外の騒音や隣の部屋の音が聞こえにくくなる
・結露が発生しにくくなる
・通常の窓よりも強度が増すため、防犯対策になる
・台風などの際も割れにくく、室内の損傷やけがを防止できる
こちらの記事では、住宅の台風対策について解説しています。窓に関することのほか、今すぐご家庭でもできる対策を紹介しているため、ぜひご覧ください。
断熱性の高い窓を設置する
本格的な断熱対策を検討するなら、断熱性能の高い窓を設置することが有効です。前項で紹介した複層ガラスのなかには、より断熱性能に優れた「Low-E膜」をコーティングしたLow-E複層ガラスや、ガラスが3枚組み合わさったトリプルガラスなどもあります。
さらに、窓枠を一般的なアルミサッシから樹脂素材にすることで、窓枠から逃げる熱が減り、断熱性をより高められます。現在、家づくりを検討中の方は、断熱性に優れた窓の取り扱いがある工務店や建築会社へ相談してみましょう。
まとめ
街の四季をパノラマで切りとる連窓の家 佐賀県/(株)ジョージホーム
窓の断熱シートを選ぶ際は、厚みがあるものを選ぶと断熱性能を高められます。ただし、断熱シートだけでは性能が限られているため、厚手の断熱カーテンを取り付けるほか、断熱ボードやプラダンを使用することも考慮しましょう。
根本的な解決策としては、二重窓やLow-E複層ガラス、樹脂サッシなどを取り入れた、断熱性能の高い窓を取り付ける方法が挙げられます。これから家づくりを始める方は、工務店や建築会社に相談してみましょう。
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