冬の寒さが厳しい季節、家の中でも寒さを感じていませんか？光熱費が高騰するなか、暖房費を抑えながら快適に過ごせる家づくりを実現したいですよね。
実は、暖かい家を作るには暖房器具を充実させるだけでは不十分です。建物の断熱性や気密性を高め、間取りや設備を工夫することで、少ないエネルギーで暖かさを保てる住まいが実現できます。
この記事では、冬でも暖かい家を作るための設計・間取り・設備のポイントを詳しく解説します。これから家づくりを始める方や、リフォームを検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
そもそも冬に家の中が寒くなるのはなぜ？
暖かい家を作るには、まず家の中が寒くなる原因を理解することが大切です。寒さの原因を知ることで、効果的な対策を講じることができます。
ここでは、家の中が寒くなる主な5つの原因について解説します。
断熱性が低い
断熱性が低い家は、外気の冷たさが室内に伝わりやすく、暖めた空気もすぐに外へ逃げてしまいます。
とくに築年数の古い住宅では、断熱材が不十分だったり経年劣化していたりすることがあり、壁や床、天井から冷気が侵入し、暖房をつけても室内がなかなか暖まりません。
このように、断熱性が低いと暖房の設定温度を上げても効果が薄く、光熱費ばかりがかさんでしまいます。家計の負担が大きくなり、快適性も損なわれるのです。
気密性が低い
気密性が低い家では、建物の隙間から冷たい外気が入り込み、暖かい空気が逃げていきます。
隙間風は想像以上に室内の温度を下げる原因となります。窓やドアの周辺、壁と床の接合部、配管の貫通部などから冷気が侵入し、せっかく暖房で暖めた空気も外に流出してしまうのです。
また、気密性が低いと室内の湿気が壁の中に入り込み、結露が発生しやすくなります。結露はカビやダニの繁殖を招くだけでなく、建材を腐らせたり、シロアリの発生原因にもなります。家の寿命を縮める要因にもなるため、気密性の確保は重要です。
建物自体が冷えている
建物の構造材そのものが冷え切ってしまうと、室内を暖めるのに時間がかかります。
木造住宅は熱伝導率が低いため、長時間留守にするなどして一度建物全体が冷え切ってしまうと、暖め直すのに時間が必要になります。
しかし、高断熱・高気密にすることで、木材の持つ「一度暖まると冷めにくい」というメリットを最大限に活かせます。
コールドドラフト現象が起きている
コールドドラフト現象とは、窓際で暖かい空気が冷やされ、足もとに下降気流が生まれる現象です。
室内の暖かい空気が窓ガラスに触れると、急速に冷やされて重くなり、下へと流れ落ちます。この冷たい空気が床に沿って部屋全体に広がるため、足もとが冷え、体感温度が大きく下がってしまうのです。
とくに窓が大きい部屋や、窓の断熱性能が低い住宅では、このコールドドラフト現象が顕著に現れます。暖房をつけているのに足もとだけが寒いと感じる場合は、この現象が原因かもしれません。
対策としては、高性能な窓を採用することや、シーリングファンで空気を攪拌することが効果的です。
暖房設備が整っていない
部屋の広さや間取りに対して、暖房設備の能力が不足している場合も寒さを感じる原因になります。
たとえば、広いリビングに小さな暖房器具を1台だけ置いても、部屋全体を暖めることはできません。また、個別の暖房器具だけに頼っていると、暖房をつけている部屋と廊下やトイレなどの非居室の間で大きな温度差が生まれてしまいます。
さらに、暖房器具の配置が適切でない場合も、暖房効率が悪くなります。家全体を効率よく暖めるには、住宅の性能に合わせた適切な暖房設備を選ぶことが大切です。
暖かい家を作ることのメリット
気密性・断熱性に優れた暖かい家を作ることには、快適性の向上だけでなく、さまざまなメリットがあります。
ここでは、暖かい家がもたらす5つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
快適な住環境を実現できる
Afternoon Tea House 鹿児島県／有邦開発(株)
高断熱・高気密によって暖かさが適切に保たれた家では、居室だけでなく廊下や水回りといった非居室との温度差が少なくなり、家全体が快適な空間になります。
寒い冬の朝などは、室温が低いと体の動きが鈍くなり、朝の準備や家事も億劫になってしまうでしょう。しかし、暖かい家であれば、家のどこにいても快適に過ごせるため、活動的で充実した毎日を送ることができます。
リビングから廊下に出たときのヒヤッとする感覚や、お風呂に入るときの寒さもありません。家族全員が快適に過ごせる住環境は、暮らしの質を大きく向上させます。
光熱費を抑えられる
高断熱・高気密の家では、少ないエネルギーで室内を暖められるため、光熱費を大幅に削減できます。
断熱性能が高いと、外気の冷たさが室内に伝わりにくく、暖めた空気が外に逃げにくくなります。そのため、暖房の立ち上がり時間が短縮され、設定温度も低めで快適に過ごせるようになるのです。
一度適温になった室内は、その温度を長時間キープできるため、暖房を切ってもすぐには寒くなりません。結果的に、暖房の稼働時間が減り、省エネにつながります。
光熱費の高騰が続く昨今、暖かい家づくりは家計にも優しい選択といえるでしょう。
結露を防ぎ建物を長持ちさせられる
高気密・高断熱の家は、結露の発生を抑え、建物の寿命を延ばす効果があります。
結露は、室内の暖かく湿った空気が冷たい窓や壁に触れることで発生します。結露を放置すると、カビが生えるだけでなく、壁の内部にまで湿気が侵入し、断熱材の性能低下や建材の腐食を招きます。
高断熱・高気密の家では、室内と壁面の温度差が小さくなるため、結露が発生しにくくなります。これにより、建物の劣化を防ぎ、長期にわたって快適に住み続けられます。
遮音性を高められる
気密性を高めると、外部からの騒音を遮断する効果も高まります。
気密性が高いということは、建物に隙間が少ないということです。隙間が少ないほど、交通音や隣家の生活音といった外部の音が室内に入りにくくなります。
静かな環境で過ごしたい方や、在宅ワークで集中できる空間が必要な方にとって、高い遮音性は大きなメリットです。暖かい家づくりを進めるなかで、自然と遮音性も向上します。
ヒートショックを予防できる
暖かい家では、部屋ごとの温度差が少なくなるため、ヒートショックのリスクを大幅に減らすことができます。
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心筋梗塞や脳卒中を引き起こす危険な現象です。とくに冬場、暖かいリビングから寒い脱衣所や浴室に移動したときに発生しやすく、高齢者や高血圧の方はとくに注意が必要です。
冬場の入浴中に心疾患で亡くなる方は、交通事故による死亡者数を上回るともいわれています。家族の健康と安全を守るためにも、家全体の温度を均一に保つことは重要です。
冬でも暖かい家を作るためのポイント8つ
暖かい家を実現するには、建物の性能を高め、適切な設備と間取りを選ぶことが重要です。
ここでは、冬でも暖かい家を作るための8つのポイントについて、詳しく解説していきます。
木造を選ぶ
心を満たす、木の住まい 鶴が丘の家 宮城県／(株)カネソ曽根建業
木造住宅は、暖かい家づくりに適した構造です。
木材は、コンクリートや鉄に比べて熱伝導率が非常に低い素材です。たとえば、木材の熱伝導率は約0.12W/mKであるのに対し、コンクリートは約1.6W/mK、鉄は約53W/mKと大きな差があります。つまり、木材は熱を伝えにくい半面、断熱性に優れているのです。
また、木材は一度冷えると暖まるのに時間がかかる特性がありますが、高気密・高断熱にすることで、一度暖まると冷めにくいという利点を活かせます。木材本来の持つ優れた断熱性能を最大限に活かし、暖かさを長時間保てるのです。
さらに、木造住宅は調湿性にも優れており、室内の湿度を適度に保ちます。暖かく快適な住環境を実現するには、木造が最適な選択といえるでしょう。
出典：一般財団法人 住宅・建築SDGs推進センター「材料の熱定数表」（https://www.ibecs.or.jp/best/files/tec_info/material_3.pdf）
建物の断熱性を高める
建物の断熱性を高めることは、暖かい家づくりの最も重要なポイントです。
断熱性を高めるには、効果の高い断熱材を適切に使用し、建物全体をすっぽりと覆うことが必要です。ここでは、断熱性を高めるための3つのポイントを詳しく見ていきましょう。
効果の高い断熱材を使う
断熱性能を左右するのは、断熱材の種類と厚みです。
断熱材には、グラスウール、ロックウール、ウレタンフォーム、セルロースファイバーなど、さまざまな種類があります。それぞれ熱伝導率が異なるため、熱を通しにくい性能の高い断熱材を選ぶことが大切です。
ただし、性能のよい断熱材を選んでも、厚みが足りなければ効果は大きく下がってしまいます。そのため、断熱材は適切な厚みを持たせ、均一に入れることがとても重要です。これこそが、高い断熱性能を引き出すための大切なポイントです。
建物全体を断熱材で覆う
暖かい家を作るには、建物全体を断熱材ですっぽりと覆うことが重要です。
一部だけを断熱しても、断熱されていない箇所から熱が逃げてしまい、十分な効果が得られません。基礎から壁、天井、屋根裏に至るまで、建物全体を隙間なく断熱材で包み込むことで、熱損失を最小限に抑えられます。
建物全体を隙間なく覆うことで、どの部屋でも均一な温度を保つことができ、快適な住環境が実現します。
窓やドアの断熱性にもこだわる
窓は、住宅の中で最も熱が逃げやすい場所です。
地域や建物の性能によって異なりますが、冬場は室内の暖かい空気の約半分が窓から逃げるといわれています。そのため、いくら壁や天井の断熱を強化しても、窓の断熱性能が低ければ、暖かい家は実現できません。
窓の断熱性を高めるには、トリプルガラスや複層ガラスを採用し、窓枠には熱を伝えにくい樹脂サッシを選ぶことが効果的です。
また、玄関ドアも熱が逃げやすい箇所なので、高断熱仕様の玄関ドアを選びましょう。窓とドアの断熱性能を高めることで、暖房効率が飛躍的に向上します。
こちらの記事では、UA値とC値の違いについて解説しています。 計算方法や推奨する数値も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
建物の気密性を高める
断熱性と同じくらい重要なのが、建物の気密性です。
気密性とは、建物の隙間をなくして外気の出入りを防ぐ性能のことです。気密性が低いと、せっかく高性能な断熱材を使っても、隙間から冷気が入り込み、暖かい空気が逃げてしまいます。
気密性を測る指標として「C値（相当すき間面積）」があります。C値が小さいほど隙間が少なく、高気密な住宅といえます。
気密性を高めるには、施工の精度が重要です。窓やドアの周辺、配管の貫通部、壁と床の接合部など、細部まで丁寧に気密処理を施すことで、高い気密性能を実現できます。高気密・高断熱の家は、少ないエネルギーで快適な室温を保てる、理想的な暖かい家なのです。
こちらの記事では、高気密高断熱の住宅について解説しています。 特徴やメリット・デメリットも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
日光を取り込める設計にする
太陽の力を利用して室内を暖めることも、暖かい家づくりの重要なポイントです。
冬場の太陽光を効果的に室内に取り込むことで、自然の熱エネルギーを活用できます。南側に大きな窓を配置し、冬の低い角度の日差しを室内に取り込むことで、日中は暖房を抑えても快適に過ごせます。
ただし、夏場は逆に日差しを遮る工夫も必要です。庇や軒を適切な長さにすることで、夏の高い角度の日差しは遮り、冬の低い角度の日差しは取り込むことができます。季節に応じた日射コントロールが、年間を通して快適な住まいを実現します。
天井が高い場合にはシーリングファンを設置する
吹き抜けや高天井の空間では、暖かい空気が上部に溜まりやすくなります。
暖かい空気は軽いため、天井が高い空間では上へ上へと昇っていきます。その結果、足もとは寒いのに天井付近だけが暖かいという温度のムラが生じ、暖房効率が悪くなります。
この問題を解決するのがシーリングファンです。シーリングファンを回すことで、天井付近に溜まった暖かい空気を攪拌し、部屋全体に循環させることができます。
開放的な吹き抜けや高天井のリビングを検討している方は、シーリングファンの設置も合わせて計画しましょう。
建物全体の温度差をなくせる暖房設備を選ぶ
家全体を均一に暖められる暖房設備を選ぶことも重要です。
個別のエアコンや暖房器具だけに頼っていると、暖房をつけている部屋とそうでない部屋の間で大きな温度差が生まれます。とくに廊下やトイレ、脱衣所などは寒いままになりがちです。
全館空調システムを導入すれば、家全体を一定の温度に保つことができます。また、高気密・高断熱の住宅であれば、エアコン1台で家全体を賄えるケースもあります。住宅の性能や間取りに合わせて、家全体を効率よく暖められる方法を検討しましょう。
暖房効率のよい間取りを意識する
間取りの工夫によって、暖房効率を大きく向上させることができます。
どんなに高性能な暖房器具を導入しても、間取りが暖房効率を考慮していなければ、効果は半減してしまいます。ここでは、暖房効率を高める間取りのポイントを3つご紹介します。
部屋の形状や組み合わせはシンプルにする
複雑な間取りは、暖気が届きにくい場所を生み出してしまいます。
入り組んだ形の部屋や、廊下で細かく仕切られた間取りでは、暖かい空気がスムーズに循環せず、部屋の隅や廊下が寒いままになります。そのため、暖房器具を複数台設置する必要が生じ、設備費用も光熱費もかさんでしまうのです。
できるだけシンプルな形状の部屋にし、無駄な廊下を減らすことで、暖房効率が向上します。
個別エアコンを使うなら空間を仕切る
個別のエアコンで暖房する場合は、空間を適度に仕切ることが効果的です。
リビング階段や吹き抜けなど、開放的な間取りは魅力的ですが、個別暖房では暖気が広い空間に分散してしまい、効率が悪くなります。
個別エアコンを使用する場合は、扉やパーティションで空間を仕切り、暖気を閉じ込めることで暖房効率が高まります。
全館空調を使うなら部屋をつなげる
全館空調を採用する場合は、逆に空間をつなげた開放的な間取りが効果的です。
全館空調は、家全体の空気を循環させて温度を均一に保つシステムです。そのため、空気が自由に流れる開放的な間取りにすることで、より効率よく家全体を暖められます。
吹き抜けやリビング階段も、全館空調であれば空気の循環を促進し、家全体を快適に保つ役割を果たします。暖房方式に合わせて最適な間取りを選ぶことが、暖かく快適な家づくりの秘訣です。
地域の気候に詳しい施工業者に相談する
暖かい家を実現するには、地域の気候風土を熟知した工務店や建築会社に相談することが重要です。
日本は南北に長く、地域によって気温や湿度、日照時間、降雪量などが大きく異なります。北海道と沖縄では求められる住宅性能が全く違いますし、同じ地域でも環境によって気候特性が異なります。
地域の気候に精通した工務店であれば、その土地に最適な断熱仕様や暖房設備、間取りの工夫を提案してくれます。暖かい家づくりを成功させるには、地域の気候風土を知り尽くした信頼できるパートナー選びが欠かせません。
暖かい家を作る際の注意点と対策
高気密・高断熱の暖かい家には、多くのメリットがある一方で、いくつか注意すべき点もあります。
ここでは、暖かい家づくりで起こりがちな問題と、その対策について解説します。
室内が乾燥しやすくなる
暖かい家では、室内が乾燥しやすくなる傾向があります。
温度が高いほど、相対湿度は低くなります。暖かい家では室温が高く保たれるため、結果的に湿度が下がり、乾燥を感じやすくなるのです。
対策としては、加湿器を使用することが効果的です。また、洗濯物を室内干しにしたり、観葉植物を置いたりすることでも、室内の湿度を上げることができます。適度な湿度を保つことで、快適で健康的な室内環境を維持できます。
室内の音が反響しやすくなる
高気密な家では、音が外に逃げにくい分、室内で反響しやすくなります。
外部の騒音を遮断できるメリットがある一方で、室内の音が反響し、声や足音が響きやすくなることがあります。
対策としては、カーペットやラグを敷いたり、カーテンやクッションなどの布製品を配置したりすることで、音を吸収できます。また、家具の配置を工夫するだけでも音の反響を軽減することができます。
高気密高断熱の家では開放型石油ストーブが使えない
高気密・高断熱の家では、開放型の石油ストーブやガスストーブの使用は避けるべきです。
開放型のストーブは、燃焼時に一酸化炭素を発生させます。高気密な住宅では空気の入れ替わりが少ないため、一酸化炭素が室内に溜まり、一酸化炭素中毒を引き起こす危険性があります。
また、開放型ストーブは燃焼時に大量の水蒸気を発生させるため、結露の原因にもなります。高気密・高断熱の家では、エアコンや床暖房など、安全な暖房設備を選びましょう。
夏場の日射管理・室温管理も考えておこう
暖かい家づくりを進める際は、夏場の快適性も考慮しましょう。
高気密・高断熱の家は、冬の暖かさを保つのと同様に、夏の暑さもこもりやすい特性があります。日射管理を怠ると、室内が蒸し風呂のようになってしまいます。
対策としては、庇や軒を適切な長さにして夏の高い角度の日差しを遮ることが効果的です。また、日射熱を遮る性能の高い窓ガラスを採用することもおすすめです。冬の暖かさだけでなく、夏の涼しさも実現できる家づくりを目指しましょう。
まとめ
冬でも暖かい家を作るには、建物の断熱性と気密性を高め、適切な暖房設備と間取りを選ぶことが重要です。
断熱性を高めるには、効果の高い断熱材を使い、建物全体をすっぽりと覆うことが重要です。とくに窓やドアの断熱性能にこだわることで、暖房効率が大きく向上します。また、気密性を高めて隙間風を防ぐことも欠かせません。
暖かい家づくりを成功させるには、地域の気候風土を知り尽くした経験豊富な工務店や建築会社に相談することが何より大切です。
高気密・高断熱の家づくりなら、ぜひ「FPの家」をご検討ください。全国の「FPの家」ビルダーは、それぞれの地域の気候特性を深く理解し、その土地に最適な暖かい家を提案しています。
家づくりでお悩みの方は、ぜひ地域の気候風土を知り尽くした「FPの家」ビルダーにご相談ください。あなたとご家族が快適に暮らせる、理想の住まいを一緒に作り上げましょう。