新築を検討するなかで「キッチンに床下収納をつけたいけれど、どんな物を入れると便利なんだろう?」「湿気が気になって上手に使いこなせていないかも」という声は少なくありません。
床下収納は、足元のスペースを活かせる便利な設備です。使い方のコツを押さえることで、収納物を良好な状態で保ち、スペースを最大限に活用できます。
この記事では、床下収納に「入れてよいもの・避けた方がよいもの」をわかりやすく整理し、メリットやデメリット、暮らしが快適になる活用アイデアまで紹介します。理想の住まいづくりに向けて、ぜひ参考にしてください!
床下収納とは
床下収納とは、建物の床の下に設けられた収納スペースのことです。
木造住宅では、床下の湿気を防ぐために建築基準法で「地面から床の上面までは45cm以上確保すること」と定められています。この規定によって床下に一定の空間が生まれ、そのスペースを収納として活用できるのが床下収納です。
床下には給排水管や電気配線などが通っていますが、多くは使われないままのデッドスペースになっています。そこで、床の一部を開閉できるようにして、普段は活用しにくい空間を収納として役立てる仕組みになっています。
出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令第22条」 https://laws.e-gov.go.jp/law/325CO0000000338
床下収納の主な設置場所
床下収納は、キッチンや洗面室などの水回りに設置されることが一般的です。 これは、床下収納が「床下点検口」を兼ねる場合が多いためです。
とくに長期優良住宅では、認定基準として「床下点検口の設置」が求められており、点検口は給排水管が集まる水回りに設けるのが基本になります。水漏れやシロアリ被害を確認しやすい位置に設置することで、メンテナンス性を高められます。
また、デザイン性を重視したい場合は、和室の畳の下やパントリー内、ウォークインクローゼット内といった目立ちにくい場所に設置することも可能です。来客時に視線が届きにくい位置を選べば、生活感を抑えつつ収納力を確保できます。
このように、床下収納は点検のしやすさとデザイン性の両方を踏まえて、柔軟に配置できる点が大きな特徴です。
床下収納を作るメリット
床下収納の仕組みや特徴を理解したところで、実際に設置するとどのようなメリットが得られるのかが気になる方も多いのではないでしょうか。床下収納を設けると、暮らしの利便性が高まるさまざまなメリットがあります。
ここでは、そのなかでも代表的な4つのポイントを紹介します。
居住スペースを削らずに収納を増やせる
床下収納の最大のメリットは、床面積を消費せずに収納スペースを確保できることです。
収納家具を置いたり、造作収納を設けたりすると、どうしても居住空間が狭くなってしまいます。しかし床下収納であれば、普段使われていない足元の空間を有効活用できるため、リビングやキッチンの広さをそのまま保ちながら、収納量を増やすことが可能です。
人目に触れないため生活感を抑えられる
オープンなキッチンやリビングでは、生活感のある雑多なものを隠したいと感じることがあります。
床下収納は床の下に収められるため、扉を閉めれば中身が完全に見えなくなります。日用品のストックや防災グッズなど、必要だけれど見た目が気になるものを収納しておくことで、空間をすっきり保てます。
インテリアにこだわりがある方や、パッケージ類を表に出したくない方でも取り入れやすく、見た目と機能性を両立できる収納方法です。
子どもやペットの誤飲・いたずらを防止できる
小さな子どもやペットがいる家庭では、誤飲や誤食の心配がつきものです。とくに洗剤や漂白剤、医薬品、鋭利な小物などは、ちょっとした隙に手に届く場所にあると大きな危険となります。
床下収納は大人でなければ開けにくい構造になっているため、こうした危険物を安全に保管できます。扉を閉めておくだけで、中身が完全に見えなくなるため、好奇心旺盛な子どもや、ペットが誤って触れる心配を大幅に減らせます。
手の届かない場所にしまっておくことで、家族全員が安心して暮らせる環境を整えられます。
床下の点検口にも使える
床下収納は、単なる収納としてだけでなく、床下点検口としての重要な役割も果たします。
床下では、水漏れやシロアリ被害、カビの発生といったトラブルが起こりやすく、見えない部分だからこそ注意が必要です。定期的に点検することで早期発見と早期対処が可能になり、住宅の寿命を延ばすことにもつながります。
また、長期優良住宅の認定を受けるためには、床下点検口の設置が必須とされています。床下収納を点検口として兼用すれば、点検のしやすさと収納力の両方を確保でき、メンテナンス性の高い住まいを実現できます。
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床下収納を作るデメリット・注意点
設置を検討する際には、注意点を理解しておくことで、より快適に活用できます。ここからは、その主なポイントを確認していきましょう。
湿気が溜まりやすい
床下は外気の影響を受けやすく、室内に比べて湿度が高くなりがちです。
とくに気密性の高い住宅では、床下の空気が滞留しやすく、カビや虫が発生するリスクがあります。湿気によって収納物が傷んだり、ニオイが気になったりすることもあり、注意が必要です。
対策としては、定期的に蓋を開けて換気することに加え、除湿剤を置く、収納物を密閉容器に入れるなどの工夫が有効です。こうした習慣を取り入れることで、床下収納をより衛生的に保てます。
蓋や隙間から熱が逃げやすい
高気密・高断熱の住宅では、床下収納の蓋まわりのつくりによって、室内の温度環境に影響が出る場合があります。わずかな隙間から熱が出入りしてしまうと、せっかくの性能が十分に発揮されにくくなることもあります。
この問題を避けるには、断熱材付きや気密パッキン付きの高性能な床下収納ユニットを選ぶことが大切です。
縁で段差ができる
床下収納を設置すると、床の穴と蓋を囲む縁によって、どうしても段差が生じます。
段差は数mm程度ですが、つまずきやすくなるため、小さな子どもや高齢者がいる家庭では注意が必要です。また、キッチンでの作業中に踏むとガタつきが気になることもあります。
対策としては、段差の少ない仕様を選ぶ、キッチンマットを敷くなどの方法があります。
出し入れが負担になる可能性がある
床下収納は、しゃがんだり膝をついたりして物を出し入れする必要があります。
地面よりも低い位置から物を持ち上げるため、重いものや使用頻度の高いものを収納すると、腰や膝への負担が大きくなります。日常的に開け閉めするのが億劫になり、結果的に使わなくなってしまうこともあります。
そのため、床下収納は軽くて使用頻度の低いものをしまう場所だと割り切って活用することが大切です。
床下収納の種類
床下収納のメリット・デメリットを理解したら、次に知っておきたいのが「どんなタイプがあるのか」という点です。床下収納には、大きく分けて3つのタイプがあります。
それぞれに使い勝手や特徴が異なるため、仕組みを理解したうえで、用途や設置場所に合ったタイプを選ぶことが大切です。
蓋タイプ
蓋タイプは、蓋を完全に外して使用する最も一般的なタイプです。
間口が広く、物を取り出しやすい点が大きなメリットです。床下点検口としても扱いやすく、点検時の作業性に優れています。
蓋を外して使うため、一時的に蓋を置くスペースを確保する必要はありますが、キッチンに少し余裕がある家庭なら機能性の高い選択肢になります。
扉タイプ
扉タイプは、蓋が扉のように軽やかに開け閉めできる便利なタイプです。
軽い力で開け閉めできるため、日常使いに向いています。蓋を外す必要がなく、片手でも操作しやすいため、調理中でもサッと物を取り出せます。
一方で、間口が狭くなるため、大きなものや複雑な形をしたものは出し入れしにくい点に注意が必要です。また、開閉時に指を挟むおそれがあるため、小さな子どもがいる家庭では扱い方に気をつけましょう。
スライドタイプ
スライドタイプは、収納ボックスが複数連結されており、スライドさせて使うタイプです。
開口部がひとつでも複数の収納スペースを確保できるため、収納力に優れています。限られたスペースで収納量を最大化したい場合に適しています。
ただし、重いものを入れすぎるとスライドの動きが悪くなることがあります。軽量のストック品を中心に収納すると、使いやすさを保てるでしょう。
床下収納には何を入れるのがおすすめ?
床下収納の特性を踏まえると「出し入れの負担が少ないもの」や「湿気に強いもの」が適しています。ここでは、具体的に何を入れるとよいのかを、5つのカテゴリに分けてご紹介します。
日用品などのストック
洗剤、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、掃除用シートなど、かさばる日用品のストックは床下収納に適しています。
これらは未開封であれば湿気の影響を受けにくく、使用頻度も月に数回程度と低めです。キッチンや洗面室の床下収納に入れておけば、無くなったときにすぐ補充できて便利です。
保存性が高いもの
缶詰、レトルト食品、ペットボトル飲料、しょうゆ、みりんなど、長期保存できる食品や飲料も床下収納に適しています。
ただし、床下は温度変化が起こりやすいため、未開封で常温保存できるものに限定して収納することが基本です。手作りの梅酒やみそなども収納できますが、定期的に蓋を開けて状態を確認することが大切です。
使用頻度が低いもの
ホットプレート、卓上コンロ、流しそうめん機、かき氷機などの季節の調理器具や、重箱、来客用の食器といった年に数回しか使わないものは、床下収納に向いています。
出し入れの負担を抑えられ、普段使いの収納スペースを圧迫しない点が大きな利点です。ただし、カビや虫が付かないよう、袋に入れて保管するとよいでしょう。
軽くて出し入れしやすいもの
紙類やビニール袋など、軽量のストック品は、腰や膝への負担を気にせず出し入れできます。ティッシュペーパーや厚手のキッチンペーパー、ふきんや雑巾のストックなど、軽くてかさばるものをまとめて収納すれば、ほかの収納スペースに余裕が生まれます。
防災グッズ
水、非常食、簡易トイレ、衛生用品、医薬品、懐中電灯、ヘルメットなど、いざというときに必要な防災グッズも床下収納に適しています。
ただし、地震で床下収納の蓋が変形し、開かなくなるリスクがあるため、持ち出し用と自宅避難用に分けて保管する方法がおすすめです。また、乾電池は湿気に弱いため、定期的に点検し、分散して保管することを心がけましょう。
床下収納に入れない方がよいもの
床下収納は便利なスペースですが、何でも入れてよいわけではありません。 扱い方を誤ると劣化したり、使い勝手が悪くなったりするため、注意して選びましょう。
賞味・消費期限が短いもの
床下収納は開閉の手間があるため、うっかり収納したことを忘れてしまうケースがよくあります。その結果、賞味期限の短い食品を入れると、気づかないうちに期限が切れてしまう可能性が高くなります。
食品ロスを防ぐためにも、短期間で消費する食品は床下収納ではなく、日常的に確認しやすい場所に保管するようにしましょう。
よく使うもの
毎日使う調味料や食器、頻繁に使う調理器具などを床下収納に入れてしまうと、出し入れの手間が増えて日常のストレスにつながります。作業動線も悪くなり、キッチンでの作業が億劫に感じられる原因にもなります。
使用頻度の高いものは、取り出しやすい通常の収納スペースに保管することを心掛けましょう。
湿気に弱いもの
乾麺、粉類、木製品、革製品、書籍など、湿気を嫌うものは床下収納に不向きです。乾麺や小麦粉、スパイスなどの粉類は、未開封であっても湿気を吸いやすく、カビや虫が発生するリスクがあります。とくに高湿度の時期や地域では注意が必要です。
また、せいろや寿司桶のような木製品、革製品なども湿気で劣化しやすいため、床下収納は避けたほうがよいでしょう。
重たいもの
大型の土鍋や食器セット、お酒の瓶などの重いものを床下収納に入れると、出し入れの際に腰や膝へ大きな負担がかかります。さらに、収納庫自体が破損するおそれもあるため、重量のあるものは床下ではなく、通常の収納スペースで保管することをおすすめします。
まとめ
床下収納は、デッドスペースを有効活用し、居住スペースを削らずに収納力を高められる便利な設備です。適切に活用すれば、キッチンや洗面室がすっきり片付き、快適な暮らしを実現できます。
また、高気密高断熱住宅では、床下収納の仕様選びが住宅性能の維持に直結します。断熱材付きや気密パッキン付きの高性能ユニットを選べば、冬場の冷気侵入を防ぎ、心地よい室内環境を保てます。
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1階部分に設けたスキップフロアの下に設けた土間収納は室内側からだけではなく、外からも行き来が可能。タイヤなどの自動車用品やキャンプ道具などを収納できる事例や、
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客間を兼ねた和室を小上がりにし床下部分を収納として活用。日常的に使うものや子どものおもちゃを収納するなど空間をスッキリ見せることはもちろん、ベンチのように座れるのでお友達を招いてのホームパーティーなどにも大活躍の事例もあります。
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