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住まいのコラム

2025年12月4日

省エネ基準適合住宅とは?認定条件・証明書類や住宅ローン控除まで解説

2025年4月から、すべての新築住宅に「省エネ基準」への適合が義務付けられています。

住宅ローン控除や補助金の条件にも登場する「省エネ基準適合住宅」という言葉を、最近よく目にするようになった方も多いのではないでしょうか。

とはいえ「断熱等級4」や「一次エネルギー等級4」といった専門用語が並ぶと、具体的に何を意味しているのか分かりにくいものです。さらに、認定を受けるにはどのような書類や手続きが必要なのか、疑問を感じる方も少なくありません。

この記事では、省エネ基準適合住宅の定義や認定条件、証明書類の種類、住宅ローン控除との関係、さらにZEH住宅や長期優良住宅との違いまでを整理して解説します。マイホームの検討を進めるうえで役立つ基礎知識をまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

省エネ基準適合住宅とは?

省エネ基準適合住宅とは「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」で定められた基準を満たす住宅のことを指します。

この基準は、2050年のカーボンニュートラル実現を目指す国の方針のもと、建築物分野のエネルギー消費を減らすために設けられました。建物によるエネルギー使用は、日本全体の約3割を占めるといわれており、住宅の省エネ化は環境保全の大きな鍵となっています。

つまり、省エネ基準適合住宅とは、快適な室内環境を保ちながらエネルギー消費を抑える「最低限の基準」を満たした住宅です。

2025年4月以降に着工する新築住宅は、原則としてこの基準を満たすことが義務付けられており、今後の家づくりでは欠かせない前提条件となります。

出典:e-Gov法令検索「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/427AC0000000053

省エネ基準適合住宅のメリット

省エネ基準適合住宅のメリット

省エネ基準適合住宅には、暮らしの質を高めるさまざまなメリットがあります。

「義務化された最低基準」とはいえ、従来の住宅と比べると快適さや家計へのやさしさに大きな差が生まれます。

ここでは、代表的な4つのメリットを順に見ていきましょう。

年間を通して快適に過ごせる

年間を通して快適に過ごせる

省エネ基準適合住宅は、高断熱・高気密構造によって外気温の影響を受けにくく設計されています。

夏は外からの熱気を遮り、冬は室内の暖かさを逃がしにくいため、冷暖房への依存度が下がり、一年を通して快適な室温を保ちやすくなります。

さらに注目すべきは、健康面へのよい影響です。

高断熱住宅では部屋ごとの温度差が小さくなるため、冬に暖かいリビングから寒い浴室やトイレに移動した際の「ヒートショック」を防ぎやすくなります。

ヒートショックは血圧の急変を引き起こし、高齢者の事故につながるおそれがあるため、家族の安全を守るうえでも重要な要素です。

また、結露の抑制効果も見逃せません。

結露はカビやダニの原因となり、アレルギーやぜんそくのリスクを高めます。高断熱・高気密の住宅では窓や壁の表面温度が下がりにくく、結露が発生しづらいため、とくに小さな子どもがいる家庭でも安心して暮らせます。

光熱費を削減できる

省エネ基準適合住宅は、断熱性能が高いため冷暖房の効率が大きく向上します。

国土交通省の試算によると、従来の住宅に比べて年間およそ5~10万円の光熱費を削減できるとされています。

エネルギー価格が高騰している今、この削減額は家計にとって決して小さくありません。

とくに教育費や生活費の負担が大きい子育て世帯では、毎月の光熱費を抑えられることが、長期的な家計の安定につながります。

また、省エネ住宅は建築時にある程度の初期コストがかかりますが、長期的に見れば光熱費の削減で回収が可能です。長く住む家だからこそ、将来を見据えた投資といえるでしょう。

出典:国土交通省「省エネ住宅で節約できる年間の光熱費」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001596205.pdf

屋外の騒音を軽減しやすくなる

高気密な住宅は、遮音性にも優れています。

外壁や窓のすき間が少ないため、屋外の騒音や生活音が入りにくく、室内を静かで落ち着いた空間に保てます。

また、幹線道路沿いや駅の近くに建てる場合でも、車の走行音や電車の音を気にせず過ごせるのは大きなメリットです。

さらに、テレワークが一般化した今では、自宅で集中して仕事に取り組みたい方にとっても理想的な環境といえるでしょう。

お子さまの昼寝や家族のリラックスタイムも、外の音に邪魔されず快適に過ごせます。

優遇措置や補助金を活用できる

省エネ基準適合住宅は、住宅ローン控除の適用条件を満たしているため、税制面での優遇を受けられます。

また、省エネ基準を上回る「ZEH水準」や「長期優良住宅」などの高性能住宅を選べば、さらに手厚い補助金制度を利用することも可能です。

2025年4月からは省エネ基準適合が義務化

2022年6月の建築物省エネ法改正により、2025年4月からはすべての新築住宅や非住宅において、省エネ基準への適合が義務付けられています。

この制度は、日本のエネルギー政策における大きな転換点といえるでしょう。

義務化の背景

義務化の背景には、国際的に推進される脱炭素社会への取り組みがあります。

日本政府は、2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させる状態)を実現することを掲げており、その達成には建築物分野での大幅なエネルギー削減が欠かせません。

ちなみに、日本のエネルギー消費量のうち、およそ3割を建築物が占めています。

とくに住宅は数が多く、既存住宅を含めた長期的な省エネ化が求められています。新築住宅に省エネ基準を義務付けることで、住宅全体の性能を底上げし、持続可能な社会づくりを進める狙いがあります。

この制度により、省エネ性能を満たさない住宅は原則として建てられなくなりました。

つまり、省エネ基準への適合は「選べるもの」ではなく、「満たすべき条件」となったのです。

増築のリフォーム時にも適合が義務化される

増築のリフォーム時にも適合が義務化される

義務化の対象は、新築住宅だけに限りません。

増築をともなうリフォーム工事では、増築部分についても省エネ基準への適合が求められます。

ただし、外壁や屋根の修繕など、増築をともなわない改修工事は対象外です。 あくまでも「新たに建築確認が必要となる部分」に対して、省エネ基準を満たすことが義務付けられています。

今後、増築を検討している場合は、追加する部分の断熱性能や設備の省エネ性能について、あらかじめ計画しておくことが大切です。既存部分との性能差が大きいと、快適性や光熱費の面で課題が生じる可能性があるため、住宅全体のバランスを考えた設計が求められます。

2030年からは適合基準がさらに引き上げ

2025年4月に義務化された省エネ基準は、あくまで「スタートライン」にすぎません。

政府は2030年までに、新築住宅の基準をZEH水準(断熱等級5以上・一次エネルギー消費量等級6以上)へ引き上げる方針を示しています。

これは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた中間目標でもあり、住宅の省エネ性能をさらに高める必要があることを意味します。言い換えれば、現在の省エネ基準適合住宅は、数年後には「最低基準」を下回る可能性があるということです。

こうした将来の基準強化を見据えると、今のうちから高性能住宅を選ぶことには、大きな価値があります。

後から対応するよりも、最初から上位基準を満たす住宅を建てることで、資産価値の維持や光熱費削減の効果を長く享受できるでしょう。

出典:国土交通省「家選びの基準変わります」(https://www.mlit.go.jp/shoene-jutaku/

省エネ基準適合住宅の認定条件

省エネ基準適合住宅と認定されるためには、2つの主要な条件を満たす必要があります。それぞれの条件について、具体的に見ていきましょう。

出典:国土交通省「建築物省エネ法に基づく建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度 ラベル項目の解説」(https://www.mlit.go.jp/shoene-label/energy.html

断熱性能等級4以上

省エネ基準適合住宅では、断熱等級4以上の性能を満たすことが必要です。 この等級4は、1999年に制定された「次世代省エネ基準」に相当し、現在では“最低限の水準”とされています。

断熱性能とは、外壁や屋根、窓といった「外皮(建物を覆う外側)」を通じて、室内外の熱がどの程度移動するかを示す性能です。断熱性能が高いほど、外気温の影響を受けにくく、室内の温度を一定に保ちやすくなります。

より快適でエネルギー効率の高い住宅を目指すなら、等級5(ZEH水準)や等級6、等級7といった上位等級の取得を検討するとよいでしょう。

こちらの記事では、断熱等級について解説しています。 断熱等級ごとの違いや断熱等級の調べ方も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

一次エネルギー消費量等級4以上

省エネ基準に適合する住宅では、一次エネルギー消費量等級4以上、つまりBEIが1.0以下であることが求められます。BEIは「設計一次エネルギー消費量を基準一次エネルギー消費量で割った値」で、1.0以下なら基準を満たしていると判断されます。

一次エネルギー消費量とは、冷暖房や換気、給湯、照明など住宅設備が使うエネルギーを、石油や天然ガスといった一次エネルギーに換算した総量です。この評価に用いられるのがBEIという指標です。

基準と同等か、それ以下のエネルギーで暮らせる住宅を意味するため、高効率エアコンや給湯器、LED照明を採用すればさらに削減できます。加えて太陽光発電を組み合わせれば、自ら発電した分で消費分を相殺し、より高い等級を目指せるでしょう。

省エネ基準適合住宅の証明になる書類

住宅が省エネ基準に適合していることを証明するには、第三者機関が発行する正式な書類が必要です。住宅ローン控除や補助金を申請する際には、これらの証明書を提出しなければなりません。

ここでは、代表的な3種類の証明書類について紹介します。

住宅性能評価書

住宅性能評価書

住宅性能評価書は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づき、国が認めた第三者機関(登録住宅性能評価機関)が発行する書類です。

この評価書では、省エネ性能だけでなく、構造の安定性(耐震性)や火災時の安全性、劣化対策、維持管理への配慮など、10分野・32項目にわたって住宅の性能が評価されます。 新築住宅だけでなく、既存住宅(中古住宅)でも評価を受けることが可能です。

住宅性能評価書を取得すれば、住宅の性能を客観的に証明できるため、将来売却する際に資産価値を明確に示せるというメリットがあります。

ただし、評価には一定の費用と期間がかかるため、事前に評価機関へ相談し、手続きの流れを確認しておくことが大切です。

国土交通省「新築住宅の住宅性能表示制度ガイド」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/hinkaku/081001pamphlet-new-guide.pdf

住宅省エネルギー性能証明書

住宅省エネルギー性能証明書は、主に住宅ローン控除を受ける際に税務署へ提出するための証明書です。住宅性能評価書よりも省エネ性能に特化しており、断熱性能等級と一次エネルギー消費量等級が記載されています。

この証明書は、登録住宅性能評価機関のほか、設計や工事監理を担当した建築士が発行することも可能です。 建築士が発行する場合は、評価機関に依頼するより費用を抑えられることがあるため、工務店や設計事務所に相談してみるとよいでしょう。

ただし、発行には一定の審査期間がかかります。住宅ローン控除の申請は確定申告の時期に行うため、スケジュールに余裕を持って準備を進めることが大切です。

BELS評価書

BELS(ベルス:建築物省エネルギー性能表示制度)は、建物の省エネ性能を第三者機関が評価し、5段階の星マーク(★〜★★★★★)で示す制度です。星の数が多いほど省エネ性能が高いことを意味し、視覚的にわかりやすい表示方法が特徴です。

省エネ基準適合住宅の場合は、星2つ(★★)以上の評価を受けることになります。

BELS評価書は、住宅ローン控除や補助金の申請書類として利用できるほか、販売や賃貸の際に省エネ性能を明示する資料としても活用できます。

客観的な評価によって住宅の信頼性が高まり、将来的な資産価値の維持にもつながる点が大きなメリットです。

省エネ基準適合住宅の審査と申請方法

2025年4月以降に省エネ基準適合住宅を建てる場合は、建築確認申請とあわせて「省エネ適合性判定(省エネ適判)」を受ける必要があります。

この審査によって、設計段階で住宅が省エネ基準を満たしているかどうかを確認します。

申請に必要な書類

省エネ適判を申請するには、いくつかの書類をそろえる必要があります。まずは、設計内容を確認するための基本資料と、省エネ性能を証明するための計算書類が欠かせません。

【基本となる設計図書】

・建築計画書
・配置図
・平面図
・立面図
・断面図

【省エネ性能を示す書類】

・断熱性能計算書
・一次エネルギー消費量計算書

【状況に応じて必要になる書類】

・建築主から施工業者や設計事務所への委任状
・各種同意書(申請先による)

提出先となる行政庁や登録省エネ判定機関によって、求められる書類が一部異なることがあります。そのため、事前に必要書類を確認しておくことがとても大切です。

また、これらの書類の作成には専門知識が必要となるため、通常は設計事務所や工務店が代行して準備します。省エネ計算に精通した業者へ依頼できるかどうかを確認し、スムーズに手続きが進められる体制を整えておきましょう。

手続きの流れ

省エネ適判は、従来の建築確認申請に追加される形で行われます。

全体の流れを把握しておくことで、設計から着工までのスケジュール管理がスムーズになります。

1.建築確認申請と同時に、省エネ適合性判定を申請
所管行政庁または登録省エネ判定機関へ必要書類を提出します。

2.書類審査(約1〜2週間)
提出された設計図書や計算書をもとに、省エネ基準を満たしているかを審査します。

3.適合判定通知書の発行
基準を満たしている場合「適合判定通知書」が交付されます。

4.この通知書がなければ、建築確認の「確認済証」を取得できません。

5.着工
確認済証が発行されて初めて工事を開始できます。

6.完成後の完了検査
工事完了後に検査を受け「検査済証」が交付されることで住宅の使用が認められます。

適判に合格しないと着工できないため、計画段階から余裕を持ったスケジュールを組んでおくことが欠かせません。

省エネ基準適合住宅とほかの省エネ住宅の違い

省エネ基準適合住宅とほかの省エネ住宅の違い

省エネ基準適合住宅は、あくまで「最低限の基準」を満たした住宅です。 これより高い性能を備えた住宅には、ZEH住宅やGX志向型住宅など、さまざまな種類があります。

それぞれが異なる特徴や目的を持っており、性能の高さや設備の内容も大きく変わります。 違いを理解しておくことで、暮らし方や予算に合った住宅を選ぶ際の判断材料になるでしょう。

ZEH住宅

ZEH(ゼッチ:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは、断熱性能の強化と省エネ設備の導入によって一次エネルギー消費量を大きく削減し、さらに太陽光発電などの創エネルギー設備を組み合わせることで、年間のエネルギー収支を実質ゼロ以下にする住宅を指します。

認定基準は、断熱等級5以上・一次エネルギー消費量等級6以上です。 省エネ基準適合住宅(等級4/4)と比べると、より高い性能が求められます。

ZEH住宅は光熱費を大幅に抑えられる点が大きな魅力であり、ランニングコストの面でも優れています。さらに蓄電池を導入すれば、災害時の停電にも備えられるため、日常の安心感も高まります。

こちらの記事では、ZEHについて解説しています。 ZEHの種類やZEH認定の4つの要件も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

GX志向型住宅

GX志向型住宅は、ZEH基準をさらに上回る性能を備えた次世代型の省エネ住宅です。

GX(グリーントランスフォーメーション)は、脱炭素社会へ移行する取り組みを指し、この住宅はその考え方を象徴する先進的な仕様が採用されています。

また、2025年度の「子育てグリーン住宅支援事業」では、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象に、GX志向型住宅が最大160万円の補助金の対象となっています。 高性能住宅を普及させるための、国による後押しが強化されている点も大きな特徴です。

長期優良住宅

長期優良住宅は、耐久性や耐震性、劣化対策、維持管理のしやすさなど、多くの項目で高い基準を満たした住宅です。 省エネ性能については、断熱等級5以上・一次エネルギー消費量等級6以上が求められます。

長期優良住宅の大きな魅力は、税制優遇の幅広さです。

住宅ローン控除の借入限度額は最大4,500万円、子育て世帯や若者夫婦世帯では最大5,000万円まで拡大されます。さらに、登録免許税や不動産取得税の軽減措置も受けられ、経済的なメリットが充実しています。

また、長く住み続けることを前提に設計されているため、将来的なメンテナンスコストを抑えやすい点も特長です。

住宅の性能が維持されやすく、資産価値の低下を防ぎやすいため、次世代への住み継ぎを視野に入れた家づくりにも適しています。

こちらの記事では、長期優良住宅について解説しています。 メリット・デメリットや申請方法も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

低炭素住宅

低炭素住宅は「都市の低炭素化促進法」に基づく認定制度で、省エネ基準を上回る性能(断熱等級5以上)に加えて、低炭素化に役立つ取り組みを行うことが求められる住宅です。

具体的には、節水型機器の採用、敷地や屋上の緑化、HEMSの導入といった取り組みが評価対象となります。住宅ローン控除の借入限度額は長期優良住宅と同水準で、税制面でのメリットも大きい点が特徴です。

出典:e-Gov法令検索「都市の低炭素化の促進に関する法律」(https://laws.e-gov.go.jp/law/424AC0000000084

LCCM住宅

LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅とは、建設時・運用時・廃棄時のすべての段階でCO2排出量を抑え、住宅のライフサイクル全体でCO2収支をマイナスにすることを目指す住宅です。

ZEH住宅が「住んでいる間のエネルギー収支ゼロ」を目標とするのに対し、LCCM住宅は建築材料の製造から廃棄時の処理までを視野に入れ、より広い範囲で環境負荷を低減します。

脱炭素社会の実現に向けて、最も先進的な住宅のひとつといえるでしょう。

スマートハウス

スマートハウス

スマートハウスとは、IT技術を活用してエネルギー消費を最適に管理する住宅を指します。

HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)によって電気の使用状況をリアルタイムで把握し、無駄なエネルギー消費を抑えます。

さらに、太陽光発電や蓄電池と組み合わせることで、エネルギーの自給自足に近い仕組みを整えることも可能です。災害時の停電に備えられる点も、大きな安心材料になります。

スマートハウスは、省エネ性能そのものよりも「エネルギーの見える化」と「最適な制御」に重点を置いた住宅といえるでしょう。

【2024年~】住宅ローン控除は省エネ基準を満たすことが必須に

住宅ローン控除は、住宅ローンを利用して新築や購入を行った場合に、年末時点のローン残高の0.7%が最大13年間控除される制度です。

しかし、2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅では、この制度を利用するために省エネ基準を満たすことが必須条件となりました。

まずは、性能ごとの借入限度額を整理しましょう。

【住宅ローン控除の借入限度額(2024年~)】

・省エネ基準適合住宅
一般世帯:3,000万円
子育て世帯・若者夫婦世帯:4,000万円

・ZEH水準省エネ住宅
一般世帯:3,500万円
子育て世帯・若者夫婦世帯:4,500万円

・認定長期優良住宅・認定低炭素住宅
一般世帯:4,500万円
子育て世帯・若者夫婦世帯:5,000万円

・その他の住宅(省エネ基準を満たさない)
全世帯:0円(控除の対象外)

このように、住宅性能が高いほど借入限度額が大きくなり、控除額も増える仕組みです。

とくに影響が大きいのが、子育て世帯です。省エネ基準適合住宅と認定長期優良住宅では、借入限度額に1,000万円の差があります。これを13年間の控除額に換算すると、最大で約91万円の違いにもなるため、家計にとって無視できません。

住宅ローン控除は、住まい選びに大きく影響する制度です。 省エネ性能の高い住宅ほど優遇が拡大するため、住宅の性能は「快適性」だけでなく「税制面のメリット」という観点からも着目しましょう。

出典:国土交通省「住宅の供給に携わる事業者の皆様へ」(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001613031.pdf

こちらの記事では、住宅ローン減税の期間について解説しています。 対象者や手続きも取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

省エネ基準適合住宅に活用できる補助金

省エネ基準適合住宅(等級4/4)のみを対象とした補助金は、現時点ではごく限られています。ただし、住宅性能をさらに高めてZEH水準や長期優良住宅を目指すことで、国の手厚い補助金制度を利用できるようになります。

【代表的な補助金制度】

・子育てグリーン住宅支援事業(GX志向型住宅)
・ZEH支援事業(ZEH補助金)
・給湯省エネ2025事業

これらの制度は、省エネ性能を高めることで補助金額が大きくなる仕組みです。 ひとつずつ見ていきましょう。

子育てグリーン住宅支援事業

子育てグリーン住宅支援事業は、子育て世帯や若者夫婦世帯を対象に、高い省エネ性能を備えた住宅の取得を後押しする制度です。

新築住宅の場合、補助金額は性能に応じて次のように設定されています。

・GX志向型住宅:最大160万円
・ZEH住宅:最大40万円
・長期優良住宅:最大80万円

とくに子育て世帯にとっては、非常に魅力的な支援制度といえるでしょう。

一方で、補助金には予算の上限があります。申請が集中すると早期に受付が締め切られることもあり、実際に2024年度・2025年度には予算到達による終了例が確認されています。

そのため、最新の情報をこまめに確認し、早めに申請の準備を進めておくことが大切です。

出典:国土交通省・環境省「子育てグリーン住宅支援事業」(https://kosodate-green.mlit.go.jp/

ZEH支援事業

ZEH支援事業は、環境省と経済産業省が実施する、ZEH住宅の普及を目的とした補助金制度です。

新築住宅の場合、補助金額は次のとおりです。

・ZEH住宅:最大55万円
・ZEH+(より高性能なZEH):最大100万円
・ZEH+ハイグレード仕様(より高性能なZEH+):最大110~125万円

ZEH住宅は、断熱性能や省エネ設備の強化により光熱費を大きく削減できる点が魅力です。 初期投資の一部を補助金でまかなうことで、建築時の負担を抑えつつ、将来的なランニングコストも軽減できます。

省エネ性と経済性を両立したい方にとって、非常に相性のよい制度といえるでしょう。

出典:環境共創イニシアチブ ZEH Web「戸建ZEH」(https://zehweb.jp/

給湯省エネ2025事業

給湯省エネ2025事業は、高効率給湯器の導入を支援する補助金制度です。
新築住宅・リフォームのいずれでも利用しやすく、給湯設備の性能向上に直接役立ちます。

補助金額は次のとおりです。

・エコキュート(ヒートポンプ給湯機):6万円
・ハイブリッド給湯機:8万円
・エネファーム(家庭用燃料電池):16万円

給湯は家庭のエネルギー消費量の約24%を占めるため、高効率給湯器を導入することで一次エネルギー消費量を大幅に削減できます。

省エネ基準適合住宅に求められる一次エネルギー消費量等級4以上の達成にも有効な設備です。

ただし、これらの補助金制度は年度ごとに内容が変わりやすく、予算達成により早期に終了することもあります。

2026年以降も同様の制度が継続される可能性はありますが、最新情報は国土交通省や環境省の公式サイトでこまめに確認し、高性能住宅に強い工務店へ相談して進めると安心です。

出典:国土交通省・環境省「給湯省エネ2025事業」(https://kyutou-shoene2025.meti.go.jp/

まとめ

2025年4月から義務化された省エネ基準適合住宅は、これからの住まいづくりにおける最低ラインです。政府は2030年にZEH水準への引き上げを予定しており、より高性能な住宅が求められる時代が始まっています。

省エネ基準適合住宅には、光熱費の削減や快適な室内環境の実現など多くのメリットがあります。ただ、長く住むことを考えると、最初からZEH住宅や長期優良住宅といった上位基準を選ぶ方が、将来の資産価値や家計面でも有利です。

とくに子育て世帯では、結露やヒートショックの防止など健康面のメリットも大きく、住宅ローン控除や補助金を活用すれば初期費用の負担も抑えられます。

また、省エネ基準の適合には専門的な手続きが必要となるため、信頼できる工務店に相談しながら進めることが重要です。

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【ご注意ください】
補助金制度や各種支援事業の内容、補助金額、対象要件、募集期間、予算状況などは年度や時期によって変更される場合があります。 また、予算の上限に達した場合には早期に受付が終了することもあります。 申請をご検討の際は、国土交通省、環境省、経済産業省などの関係省庁や各事業の公式ホームページで最新情報を必ずご確認いただくか、施工を依頼する工務店や設計事務所にご相談ください。